【◇】ばつこい II

079.遅すぎた ページ34

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御幸


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もっと早く気づけばよかった。

スマホに打ち込んだメッセージを送信せずに消去し、スマホを握ったままベットに倒れこむ。


もし二年生のうちに葉月が好きだと自覚できていれば、こんなもどかしさを覚えることはなかった。

葉月は受験生だ。

だから冬休みとはいえ二人で出掛けようとメッセージを送るのはただの迷惑野郎。

諦めたくはない。

けど策がなさすぎてどうすればいいのか。




部活はとっくに引退してるし、

クラスは違うし、

ていうかそもそも三学期から学校でも会えなくなる。




そんな不利な条件の下、さらに鳴とつきあってるもんだから、俺の勝率はほとんどゼロ。





(参ったな、……打つ手なしか)





バツゲームでつきあっていたとき、葉月と一緒にいるのに理由は必要なかった。

気づいたら側にいて、時間を共にして。



ベットから起き上がり、机に立てた写真を手に取る。甲子園に出場したときに撮った写真。

葉月は一年生のときからずっと側にいてくれた女の子だ。

野球に熱中する俺たちを支えてくれた。


笑って、泣いて、怒って、喜んで、

三年間でいろいろな表情を見てきた。


隣にいてくれるのが当たり前すぎて、その大切さを忘れてしまっていたんだ。

自分の手から離れて鳴の手を取って、ようやく彼女が好きだったのだと自覚して。

葉月のいない未来を考えたら、どこか物足りなかった。




きっともう、俺と葉月が友達に戻れることは二度とない。

葉月が俺を選んでくれたとしても、選ばなかったとしても、


ただの友達としての関係で笑いあえることはない。




それでいい。

構わない。

生半可な覚悟じゃ、鳴の彼女を振り向かせられるわけがない。


友達に戻れなくても、俺は葉月を手に入れる努力をしたいんだ。





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