077.お守り ページ32
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そのまま少し雑談を交わしていると、成宮に「渡したいものがあるんだ」と言われたので、ここから10分ほど歩いて成宮の住むマンションの前まで行った。
成宮は家に取りに行って、その間私はエントランスで待つことにした。
成宮とつきあうことになるなんて、中学生の私じゃ考えてもみなかったなあ。
あのときは普通に友達って関係だったし。
こうしてお互いに恋愛感情を抱いてるのが不思議なくらいだ。
だからといって好きって気持ちが嘘なわけじゃない。
ちゃんと、好き。
「ごめん、お待たせ」
成宮は小走りで現れた。
私を待たせる時間をちょっとでも短くしようとしてくれるところとか、そんな細かい気遣いに胸がきゅんとする。
「これだけ渡しておきたくて」
そう言って成宮が差し出してきたのはお守りだった。
学業のお守りかと思ったが、よく見ると健康祈願と書かれていて思わず頬を緩める。
「葉月さ、中学の時言ってたじゃん。
大事なことは、自分の力で手に入れないといけないものは、神様に頼らないで自分でなんとかするって。
どうせ、初詣でも大学に受かりますようにって願ってないでしょ?」
「……よくご存知で」
「だから俺が代わりに祈っといた。葉月は頑張ってるし、病気にでもかからない限り受かるよ」
「あと少しの辛抱だよ」と優しく笑ってくれて、それだけでもう受験の不安とかいろんなことが吹っ飛ばされる。
目の前にパアッと黄色い光が広がるような。
成宮は魔法を使えるのかもしれない。
私にだけ効く魔法を。
お守りを両手で包み、胸の前で控えめに握る。
「…うん、ありがとう成宮」
成宮といるとなんでもできる気がする。
そんなことを思えるほど、
自分を高めてくれる相手とつきあえていること。
私はすごく幸せ者だ。
成宮はへへっと得意げに笑った後、少しずつ表情を曇らせていった。
どうしたのと尋ねる前に、背中に手を当てられてグッと強い力で引き寄せられて、成宮の腕の中にすっぽりとおさまった。
伝わってくる鼓動に顔が熱くなる。
「ね、……葉月」
「うん?」
「俺のこと、ちゃんと好き?」
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ましゅまろーず(プロフ) - 麻奈さん» 成宮くんはなんだかんだで葉月の幸せを願ってすれ違ってしまいました…書いてるこっちも辛いです(ノ_<) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - ホイップクリームさん» 自分の気持ちを誰かに伝えるって本当に難しいですよね…ホイップクリームさんに共感していただき嬉しいです!高校生編では結局葉月はどっちともくっつきませんでした、、続編でもホイップクリームさんとお話できると嬉しいです!これからもよろしくお願いします(*´-`) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
麻奈(プロフ) - 鳴いぃぃ…(´;ω;`)そんな鳴も私は好きだよォ…(;Д;)(;Д;) (2017年12月9日 8時) (レス) id: 4a91041800 (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - いつもお話していただいてすごく楽しいです! これからも仲良くしていただけたら嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - なんかもうすごいです…上手く言えなくてすみません…!! 人に想いを伝える事の難しさが表されていてとても心に響きます!ましゅまろーずさんの作品本当に皆の想いが伝わってきますね!私には出来ません…すごく尊敬しています!! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年8月12日 11時