074.もう戻れない ページ29
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爪先の感覚が麻痺していくほど冷え込んでいた原因、それは上から降ってくる白いふわふわのせいだった。
漆黒に澄んだ夜空に、雪の白さが一層際立つ。
手を伸ばして捕まえたかったけれど、能天気に騒ぎ回れる状況ではない。
ここが告白現場だということを1秒でも脳の片隅にしまってしまった私は、救いようのない薄情な人間だ。
高1からずっと片想いしていた人に、やっと今好きだと言ってもらえた。
どんな手を使ってでも欲しかったその言葉を。
やっと想いが報われた、やったーと素直に喜べるほど私は単純じゃないし、もう事態は引き返せないところまできていた。
なんで、どうして、今更。
ずっと待ってたのに。
待ちくたびれちゃったよ。
それを言葉にできる体力なんて持ち合わせていなくて、何も言わない私と御幸の間にはただただ時間と雪が通り過ぎてゆく。
もどかしい想いがぐるぐると駆け巡って、そんな中でもたった一つ確かなことは、
私が今好きな人は成宮だってこと。
「……うん、鳴なんだよな、お前が今好きなのは」
ギクリと心臓が驚きの音を立てた。
心を読まれたのかと思った。
顔を上げれば、どこか吹っ切れた様子の御幸と再び視線が絡まる。
目が合ってしまうと告白を断ってしまった罪悪感が喉の奥を熱くさせる。
告白はされる方も答えるのにすごく勇気がいるんだ。
じゃあ御幸は私の告白を二回も平気で断ったわけじゃない。
そう考えるだけで心の底に沈んでいた鉛が外れて報われたような気がした。
御幸は手を首の後ろに当てたり、頭をかいたり、始終落ち着かないようだったけど、ポケットに居場所を決めたようでようやく落ち着いた。
「だから、もう一回お前に好きになってもらいたい」
「……私は」
「って、鳴なら言いそうだよな」
ぽかんと目を見開く私に、御幸の口元は綺麗な弧を描いた。
「お前が鳴の彼女でも、本気で奪いたい」
子供みたいに楽しそうに笑うから、苦し紛れに絞り出したのは「…性格悪いよ」と御幸にとっては当たり前の一言だけ。
御幸は今度は白い歯を見せると、
「はっはっはっ!知ってる」
と高々に笑った。
久しぶりに2Bの空気に戻れたような気がして。
でももうあの時のように笑いあえることは、
友達として笑いあえることはないんだと
その事実を知ったら静かに胸の奥が悲鳴をあげた。
変化に気づいた、クリスマスの夜。
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ましゅまろーず(プロフ) - 麻奈さん» 成宮くんはなんだかんだで葉月の幸せを願ってすれ違ってしまいました…書いてるこっちも辛いです(ノ_<) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - ホイップクリームさん» 自分の気持ちを誰かに伝えるって本当に難しいですよね…ホイップクリームさんに共感していただき嬉しいです!高校生編では結局葉月はどっちともくっつきませんでした、、続編でもホイップクリームさんとお話できると嬉しいです!これからもよろしくお願いします(*´-`) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
麻奈(プロフ) - 鳴いぃぃ…(´;ω;`)そんな鳴も私は好きだよォ…(;Д;)(;Д;) (2017年12月9日 8時) (レス) id: 4a91041800 (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - いつもお話していただいてすごく楽しいです! これからも仲良くしていただけたら嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - なんかもうすごいです…上手く言えなくてすみません…!! 人に想いを伝える事の難しさが表されていてとても心に響きます!ましゅまろーずさんの作品本当に皆の想いが伝わってきますね!私には出来ません…すごく尊敬しています!! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年8月12日 11時