059.手離せない ページ14
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雑談を交わしながら星の淡い光が照らす道を歩く。寒さに身震いし、両手に息を吹きかける。
「……寒い?」
横から手が伸びてきて冷えた私の手を握り指を絡める。成宮の手は冬に不釣り合いなほど暖かくて。心がぽかぽかと熱を帯びて、身体中に伝わっていく。
「成宮の手、あったかいね」
そう言うと成宮は視線を泳がせて「う、…ん」と曖昧に返事をした。横から覗ける頬は、ほのかに赤い。
「…………ぶっちゃけるとさ、ポッケの中にあるカイロでずっと手あっためてたわけ」
「へ?」
「葉月と手ぇ繋ぎたかったから」
「!……っ」
ココアよりも甘い台詞に急激に恥ずかしくなって、心臓が活発に動き始める。
成宮はこうやって好意をストレートに伝えてきてくれる。自惚れなんかじゃなくて、私のこと好きなんだなって十分わかるんだ。
繋がれた手にキュッと軽く力を入れて、私は小さく口を開く。
ずっと、聞こうと思ってたこと。
私に告白した後、成宮はどうしたかったのか。
「……成宮ってさ、卒業したらプロ入りするから東京を離れるでしょ?」
「?うん」
「でも私は都内の大学に進学するし、離ればなれになっちゃうから…」
言いたいことが上手くまとまらなくて言葉がつっかえてしまった私に「……つまり?」と優しく笑って促す。
「つまり、その……どうせ離れることになるのに、なんで告白してくれたのかなって」
「……」
「私は前まで御幸に未練があってすぐにつきあえないってわかってたはずなのに」
例えつきあえたとしても他校だし私は受験生だし成宮だって野球で忙しいし、一緒にいられる時間なんて限られている。
一緒に過ごした時間よりも、
離れて過ごした時間の方が長くなる。
「プロで活躍したら美人な女子アナとかと出会って好きになるかもしれないじゃん」
「あー。女子アナとか最高だよね」
私の意見に賛同するように即答した成宮に、思わずん?と顔をしかめる。
「俺だって男だし、美人な女子アナなんかに言い寄られたら一発かもしれねーけどさ、」
へらっと笑って、白い息が夜空に吸い込まれていく。
「もし葉月が俺を選んでくれたら、一生手離せないし、一生目移りできないよ」
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ましゅまろーず(プロフ) - 麻奈さん» 成宮くんはなんだかんだで葉月の幸せを願ってすれ違ってしまいました…書いてるこっちも辛いです(ノ_<) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - ホイップクリームさん» 自分の気持ちを誰かに伝えるって本当に難しいですよね…ホイップクリームさんに共感していただき嬉しいです!高校生編では結局葉月はどっちともくっつきませんでした、、続編でもホイップクリームさんとお話できると嬉しいです!これからもよろしくお願いします(*´-`) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
麻奈(プロフ) - 鳴いぃぃ…(´;ω;`)そんな鳴も私は好きだよォ…(;Д;)(;Д;) (2017年12月9日 8時) (レス) id: 4a91041800 (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - いつもお話していただいてすごく楽しいです! これからも仲良くしていただけたら嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - なんかもうすごいです…上手く言えなくてすみません…!! 人に想いを伝える事の難しさが表されていてとても心に響きます!ましゅまろーずさんの作品本当に皆の想いが伝わってきますね!私には出来ません…すごく尊敬しています!! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年8月12日 11時