022.友達に ページ22
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御幸
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「はい、タオル」
「……ありがとう」
葉月は戸惑いつつも俺からタオルを受け取り、濡れた髪を拭いていく。
元カノとはいえ去年まで同じクラスだったし同じ部活だったし、
雨に降られて困っていた葉月を寮の自分の部屋に招き入れたのは、決しておかしなことではない…と思う。
とはいえ気まずさを感じないわけじゃない。
別れる前まではなんとも思わなかった沈黙が、今はなんていうか、重くて。
俺はその気まずさを晴らすように頭をかきながら「あー、Tシャツくらいなら貸せるけど」と必死に話題を絞り出す。それも世間話とかじゃなくて、ただの義務連絡みたいなものだが。
「ありがとう。でも別に、そんな気ぃ遣ってくれなくていいよ」
「気ぃ遣ってるわけじゃねーけど…じゃ、傘貸すからそれ使って帰れよ」
「……うん、明日返すね」
別れた恋人に対してどんな風に接するのが正解なのだろう。
わからない。葉月が初めての彼女だったから。
寮に入ってからあまり使わなかった折り畳み傘を棚から取り出して葉月に渡す。
葉月は折り畳み傘を抱えてまた小さく御礼を言った。目線を下げて、一向に俺とは目を合わそうとしない。
一度恋愛が絡んだだけで、
もうあの笑顔が見れなくなるなんて思わなかった。
______私のこと……一度も好きって思ってくれたことなかった……?
彼女の涙ながらの問いにイエスと答えてさえいれば、俺たちはまだ楽しく笑いあえていたのだろうか。
(……いや、違う)
引き延ばした俺が悪いけど、葉月に嘘を吐き続ける方がきっと酷いと思うから。
「葉月」
部屋の扉に手をかけた葉月の背中に言う。
今しかない。そう直感した。
震えかけた手を拳に変えてぐっと硬く握る。
柄にもなく緊張している自分がいて驚く。
「ほんと自分勝手なわがままなんだけどさ、聞いてほしい」
「……なに?」
部屋にやけに自分の声が大きく響いてて、気がひける。
「バツゲームのことは本当に、……本当にごめん」
「…………もういいよ。そのことは」
「けど別れたからって俺たちが一緒に過ごした時間が消えるわけじゃねーし……」
繫ぎ止めるなら、今。
「俺とつきあう前の__友達関係に戻ってほしい」
それがどんなに彼女を傷つけるかも知らないで。
俺は本当に最低だ。
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ましゅまろーず(プロフ) - ホイップクリームさん» 一途な成宮くんとか良いですよね…!私も書きながらなんで夢主は中学時代に成宮くんに惚れなかったのかと疑問に思ってたりします笑← オチは両方…書くか書かないかハーフアンドハーフって感じです!笑 ファンなんて言ってもらえて嬉しいです(*´-`)ありがとうございます (2017年8月10日 21時) (レス) id: d2f5e755bd (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - いつも2人のかっこよさを引き出して下さりありがとうございます!この話でましゅまろーずさんのファンになりました!これからも楽しみにしてます! (2017年8月10日 19時) (レス) id: a6d986faa9 (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - 鳴くんの主人公を思う気持ちに感動しました…(泣)今まで読んだ話の中で一番好きな作品です! それと…オチ2人書いてくださるかもしれないというのは本当でしょうか!?コメ見つけた時嬉しくて飛び上がってしまいました!!書いてくださる時は宜しくお願いします! (2017年8月10日 19時) (レス) id: a6d986faa9 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 真紘さん» ありがとうございます!ワンピースの方もダイヤの方も見てくださり本当に本当に嬉しいです…!ダイヤファンが増えましたか(笑) ばつこいはとくに設定を練ってる作品なのでそう言ってもらえて光栄です(*´-`) これからもよろしくお願いします! (2017年8月6日 21時) (レス) id: d2f5e755bd (このIDを非表示/違反報告)
真紘 - コメント失礼します。ましゅまろーずさんの作品は内容が深くとてもおもしろいです。僕はONE PIECEから来ましたがましゅまろーずさんのおかげでダイヤのAがすきになりました。ダイヤではとくにばつこいが一番好きです。これからも頑張ってください。長文失礼しました。 (2017年8月5日 14時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年4月1日 20時