【◇】ばつこい III

100.トライアングル ページ10

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「……ひ、久し振りだね……成宮」





不安な沈黙が流れる中、成宮の真っ直ぐな視線に耐えられなくなって、絞り出した第一声がそれ。





「…………ん、久し振り」





成宮は顔を背けて素っ気なく言い放つ。




久し振りに会えた、わーい
なんて呑気に喜べる状況じゃない。


だって成宮の立場になって考えたら、私は成宮を切り捨てて御幸を選んだ最低な女だ。

こんな女に、誰が会いたいなんて思う？



顔を上げられくって思わず俯けば、頭にポンポンと優しい感触。

私を慰める御幸の手。

触れられるたびに、心が軽くなるような。





「…じゃあ俺、もう行くから」





私と御幸を見て居心地悪そうに成宮は言い、御幸は「じゃあな鳴」と彼の不機嫌な背中に言った。









「鳴と会ってどんな気分？」

「っ……それ聞くの？相変わらず意地が悪いね」

「女子ならそこは可愛く意地悪って言えよ」





二度目の御幸の車。

痛いところを突いてくる御幸に皮肉を返すも勝てる気がしなくて、苦し紛れに視線を窓の外に移す。


家に送ってもらってる身で厚かましいけど、もう御幸のほうは見ない。





「……別に、女子と思ってくれなくて結構です」

「可愛げねーな。だから振られるんだよ、俺に」

「私も振ったし！！」





前言撤回。
ムキになって叫びながら御幸の方を見る。

すると信号待ちで車が止まって、運転から気を離した御幸と視線が絡まる。





「……お、やっと元気出たじゃん」

「へ」

「鳴に遭遇してからなんかしおらしくなってたから」





「元気出てよかった」不意打ちでかますイケメンスマイルに、不覚にも胸が高鳴る。

……あれ、なんでこんな単純に顔が熱くなってるの。私って騙されやすいのかな。





「ま、鳴とあんな別れ方してたらそりゃ気まずいよな」





いや他人事みたいに笑ってるけど、貴方もばりばりの当事者ですから。


そう思ったけど口には出せず、
顔の熱が引かないまま言ったのは。





「……意地悪」





御幸は目を見開くとパッと瞬時に視線を前に逸らした。そして口元を片手で覆って「やっべ…」と呟いた。

隠しきれていない彼の頬は微かに赤かった。





「何お前、狙った？」

「なにが？」

「…………っ今のはきたんだけど……」

「…」





御幸があまりにも照れたような顔をするから、私はくすぐったくて仕方なかった。





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