【◇】ばつこい III

095.ツンデレ ページ5

.





仕事中はきっちりと着こなしているんだろうけど、今はスーツのボタンを一つ外して腕まくりまでして、楽な格好になってる倉持。


ビールの入ったジョッキを持って、空いていた私の向かい側に腰を下ろす。

こうして向かい合って座ってると思い出す。
同じクラスで席が前後だった時のこと。





「倉持。なになに、親友の私が来て嬉しい？」





しんみりした気分を追い払い、テンションを上げて自分でも引くだる絡みを始める。

あ、酔いのせいもあるかも。


すると案の定、「嬉しくねーよ！」と安定のツッコミが返ってきた。





「相変わらず素直じゃないねー」

「うるせえお前俺のこと好きすぎだろ」

「うん。だって親友じゃん」

「だから…」



「でもAが来る前『まだ葉月来てねーの？』って倉持くん聞いてたよね」





私と倉持のやりとりを隣で聞いていた唯がくすくす笑いながら言った。

「え」と呆気にとられて倉持の方を見れば耳まで真っ赤にして「夏川！余計なこと言うな！！」と言い返して、唯の言ったことは否定しない。



冷たく突き放しつつも
なんだかんだいって

倉持も私のこと好きなんじゃん。

世に言うツンデレってやつだな。



唯は席を立ち「わー、怖ーい」と棒読みで笑いながら違う人たちのところへ移動した。

取り残された私はにやにやしながら「倉持くーん？」とビールを飲む彼をからかう体勢に入る。





「…んだよ」

「葉月が来てくれてよかったね」

「…………そうだな」

「否定しても遅____え？」





聞き間違い、じゃないよね？

お酒のせいか、それとも単に恥ずかしいからか、倉持の顔は赤いまま。

すごい早めにデレ頂きました。





「…なんだよ文句あんのかよ」

「いや全然！私も倉持に会えて嬉しいよ」

「あっそ」





こんなに素で話せる異性はきっと倉持だけ。

前に沢村くんにも仲良いって言われたし、
私がこんなうざ絡みをできるのも倉持だから。





「……あーあ、倉持を好きになればよかったな」

「…は？」

「倉持とならうまくいったと思う」

「……俺の方がお断りだっつの」

「あっはは！私何回倉持に振られればいいの」





「御幸よりも倉持に振られた回数の方が多いよ」と目に涙をためながら大笑いすれば、「そりゃ光栄だな」と倉持も笑いに笑った。





.

096.再び惹かれる→←094.親友

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す