114.だって彼女は ページ24
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成宮
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天下の成宮鳴が片想いを拗らせてるなんて、
それだけで新聞の一面を飾れそうだ。
はあっと何度目かわからない溜息を漏らす。
我ながら情けないなあ。
「鳴さん、鳴さん!」
「…あ?なんだよ」
「『なんだよ』じゃないですよ!さっきから全然俺の話聞いてくれないじゃないですか!!」
ゴンッとビールのジョッキを置き怒りだす樹を尻目に、残っていたお酒を飲み干す。
「樹の話なんて需要ないし」
「…だったら鳴さんの話聞かせてください。プロ野球のこととか興味あります」
「なんで俺がわざわざ話してあげないといけないわけ」
「…………じゃあなんで俺を飲みに誘ったんですか!」
樹の怒りが爆発する。
これで二度目だ。
いや、本気で怒ってるわけじゃないんだけどね。
空になったジョッキの底に映る自分を見つめる。
表情筋が死んでて、つまらなそうな顔をしてる。
こんな顔で俺はここにいるのか。
ちょーっとだけ、樹に申し訳なくなった。
「お前を誘ったのはなんとなくだよ。仕方ねーから話聞いてあげる。最近どうなの仕事は」
突然呼び出したのにも関わらず来てくれたんだ。
話を聞くフリくらいはしてあげよう。
そう、思ってたんだけど。
渋々開いた樹の口からは、スルーできない名前が飛び出してきた。
「……葉月さん」
「は?」
「葉月さんが、同じ会社にいます」
「…」
こいつの言ってる葉月って今俺が頭に浮かべてる葉月のことか…?
そう動揺してる俺の考えを読み取ったのか、樹は「鳴さんのよく知る葉月さんです」とにっこり笑った。
「…へえ」
「俺が稲実にいたことも覚えててくれたみたいで」
「そりゃ覚えてるだろ俺とバッテリー組んでたんだから」
「結構仲良くしてくれてます」
「なに、好きなわけ」
「いえ!俺はただ、優しい上司だなあと…」
それでも尚怪しげな目で見る俺に、「本当ですって!」と樹は念を押した。
わかるよ、
葉月はなんか人の心に近づくのが上手くて、
気づくとすっかり虜にされる。
一呼吸を置いて「それに、」と樹はくすっと笑って続けた。
「葉月さんはまだ、鳴さんに未練があると思いますよ」
「…」
「鳴さんがあげたお守りを今も身につけてるんですから」
どういうこと?
だって、葉月は一也とつきあってるんじゃ、……。
「だから鳴さん、迎えに行ってあげてください」
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ましゅまろーず(プロフ) - shinox2さん» コメントありがとうございます!いやもうそんな成宮くんとか東条くんの言葉を覚えるほど読んでくださって感謝感激です( ´ ▽ ` ) 随分と頭をひねってその言葉を考えたので、shinox2さんに共感してもらえて嬉しいです頑張った甲斐があった…笑 (2018年2月8日 20時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 真奈さん» 最後までお読みくださりありがとうございます…!私もオチは成宮くんとは決めていたものの、御幸くんでも良いんじゃないかって迷った時もありました笑 彼にも報われて欲しいですよね(´ー`) ネタさえ浮かべば御幸くんオチのも作りたいですが作るか検討中です!笑 (2018年2月8日 20時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 泣きました!大分泣きました!!何て感想を表したらいいか分かんないくらい泣かされました(^-^) 鳴ちゃんの言葉で主人公が気付いてしまった言い方の違い。東條君が主人公に助言した言葉。共感というか納得というか...ずっと頭から離れません(>_<) (2018年1月29日 22時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
真奈 - 完結おめでとうございます。最近読み始めたばかりですがずっと楽しみな作品でした。私事ですが社会人編からanother storyみたいに御幸君落ちを書いてもらえないかなと思いました。見始めた当初から両方の落ちを見たいなぁと思っていました。これからも応援しています。 (2018年1月29日 8時) (レス) id: 48b39465b4 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - ゆのさん» 少女漫画みたいな恋愛書きたいなーと思っていたのでゆのさんに伝わっていたみたいで嬉しいです! 御幸を振って成宮と結ばれた葉月には本当に幸せになってもらわなきゃですね!笑 こちらこそ長い間、最後までお読みくださりありがとうございました!! (2018年1月28日 23時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年12月24日 22時