105.熱い ページ15
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扉の前にきて御幸のあの不審な笑顔の意味がわかった。
「(ここの家って…)」
なによりも気まずさがまず胸に詰まる。
御幸は慣れた手つきでその家の鍵を開けて支えた。
彼の手にはキラリと光る銀の鍵。
「鳴と俺、お互いの合鍵持ってんの」
間違いない成宮の家だ。
「鳴が熱出して寂しい寂しいうっせーから仕方なく看病することにしてやったんだけど、ポカリ買い忘れてたから葉月に頼んだんだ」
そう説明して御幸は「ほんとにごめんな」と手を合わせた。私は横に首を振り、気にしていないということをできる限り伝えた。
「…じゃあ俺お粥作っとくから、鳴のこと見ててもらえるか?」
「……わかった」
多少の気まずさやアウェー感はあるけど、成宮が風邪をひいたのは昨日の雨かもしれないし、……。
申し訳なさが体を動かした。
小さな罪滅ぼしのつもりで看病しよう。
どうせ寝てるし、パパッと面倒見てパパッと帰る。
成宮は奥の寝室で寝ていた。
ベットに小さく丸まって寝ている姿はなんだか弱々しい。
耳を澄ませなくても聞こえる苦しそうな寝息。
御幸の家に行った時も思ったけど、こんな広い部屋に一人でいて寂しくないのかな。
大きな家には憧れる。でも自分の存在がいかにちっぽけなものなのか、痛感してしまいそうだ。
眠る彼の首筋や額に汗の雫ができていたから起こさないよう、優しく拭き取った。
ちなみに他人のタオルを勝手に探して使うのは気が引けたので、自分が持っていたハンドタオルを使った。
他にすることは、と見渡して目についたのはヘアピタ。多分、ずっと変えてない。
ヘアピタは御幸かそれとも成宮自身が変えようとしたのか寝室の棚の上に置いてあった。
新しいヘアピタを手に取り、古い方を剥がしていく。
「(あ、熱は…)」
ヘアピタを貼る前におでこに手を当ててみる。
んー、まだ熱いな。
「ん、……つめたっ…」
成宮が口の中で呟く。
すると、おでこに当ててる私の手に彼は自分の手を重ねてきた。
熱い、
成宮のおでこと手から伝わってくる熱。
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ましゅまろーず(プロフ) - shinox2さん» コメントありがとうございます!いやもうそんな成宮くんとか東条くんの言葉を覚えるほど読んでくださって感謝感激です( ´ ▽ ` ) 随分と頭をひねってその言葉を考えたので、shinox2さんに共感してもらえて嬉しいです頑張った甲斐があった…笑 (2018年2月8日 20時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 真奈さん» 最後までお読みくださりありがとうございます…!私もオチは成宮くんとは決めていたものの、御幸くんでも良いんじゃないかって迷った時もありました笑 彼にも報われて欲しいですよね(´ー`) ネタさえ浮かべば御幸くんオチのも作りたいですが作るか検討中です!笑 (2018年2月8日 20時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 泣きました!大分泣きました!!何て感想を表したらいいか分かんないくらい泣かされました(^-^) 鳴ちゃんの言葉で主人公が気付いてしまった言い方の違い。東條君が主人公に助言した言葉。共感というか納得というか...ずっと頭から離れません(>_<) (2018年1月29日 22時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
真奈 - 完結おめでとうございます。最近読み始めたばかりですがずっと楽しみな作品でした。私事ですが社会人編からanother storyみたいに御幸君落ちを書いてもらえないかなと思いました。見始めた当初から両方の落ちを見たいなぁと思っていました。これからも応援しています。 (2018年1月29日 8時) (レス) id: 48b39465b4 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - ゆのさん» 少女漫画みたいな恋愛書きたいなーと思っていたのでゆのさんに伝わっていたみたいで嬉しいです! 御幸を振って成宮と結ばれた葉月には本当に幸せになってもらわなきゃですね!笑 こちらこそ長い間、最後までお読みくださりありがとうございました!! (2018年1月28日 23時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年12月24日 22時