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episode:17 ページ24

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彼に初めて会ったあの日から
彼はよく道場に顔を出す様になった



それでも幸いな事に、目が合う事も話し掛けられる事もなく、あの日以降私と彼が対峙する事はなかった


相変わらず圭介とは仲が良いみたいだった
圭介が彼と手合わせしたい日は私は門で圭介を待っているか、真一郎君と話をして待っているかだったので
上手く彼との接触は避けられていた



そんな生活を続けて数ヶ月が経ち
季節はもうすぐ春になろうとしていた



最初こそ彼に怯えながら稽古に参加していた私も
すっかりこの生活に慣れてしまい
今では彼を視界に入れても怯えることは無くなっていた



だからだろうか…私はまた油断してしまった




その日は圭介が熱を出して寝込んでおり
私1人で稽古に参加していた



休憩中、私はいつもの縁側で空を眺めながら

(真一郎君、今日は来てくれるかな…)

なんて1人でボーッと考えていると



「…なぁ、なんで今日場地いねぇの?」



彼に話かけられた



ここ数ヶ月で完全に油断していた私にはかなりの衝撃だった



『あ…』


…落ち着け私
相手はまだ子供の頃の彼じゃないか
大丈夫、大丈夫…


そう心の中で自分に言い聞かせても、声は上手く出てくれなかった


その間も彼はジッと私の事を見ていて
私が答えるのを待っていたが、やがて痺れを切らしたのか少しずつ顔が険しくなってきた



彼の変化に気がついてしまうと私は更に萎縮してしまい、ますます状況は悪化していく



「オレ、場地は?って聞いてんだけど?
なんで答えてくんねーの?」



ついに感情を隠そうともせずにイライラした口調でもう一度私に尋ねてきた



(…ヤバい、泣きそう)



そう思った時



「…マンジロー、女の子相手に凄むな」


タイミングよく真一郎君が私たちの間に入ってくれた


私は無意識に真一郎君の背中に隠れて彼の視線から逃れた




「…だって、コイツが聞いても喋んねーから

今日、場地がいねーから聞いただけだし」



と彼は不満そうに真一郎君に返していた
それを聞いて真一郎君は


「ケースケいねぇのか?
珍しい事もあるんだな〜…どうしたんだ?」


と私の視線に合わせてしゃがんで聞いてきた


その行動に安心した私は

『熱出しちゃって…今日は休み』
と素直に答えた


「じゃあA、今日は1人か?
おばさん迎えに来られねぇなら、オレが帰り危ねぇから送ってってやるよ」


そう頭を撫で優しく笑いながら真一郎君は言った



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(プロフ) - はなさん» コメントありがとうございます‼︎私自身もまだボンヤリとしか考えておらず、この先が気になっている1人です(笑)ゆっくりではありますが更新頑張ります(о´∀`о) (2022年1月4日 9時) (レス) id: f655379a06 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 夢主がマイキーや稀咲、イザナとこの先どうなっていくか、続きが凄く気になります!!更新楽しみにしています(*^^*) (2021年12月31日 10時) (レス) id: 0c03d7cf6f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年11月11日 16時

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