彼への想い〜届かないかもしれないけど〜

笑顔*Honoka ページ13

｢やっぱり、原作通りの最高の映画だったね。｣

頬を紅潮させた莉花が、興奮気味に映画の感想を述べる。

今人気の俳優と、読モから芸能デビューした女性タレントが演じたその映画は、原作の甘い雰囲気を壊すことなく、かつ映画だけのオリジナルエピソードを織り込んだ、素晴らしいものだった。

……という感想を、莉花と千歳が楽しそうに語り合う。

なぜ私がそこに参加していないのか。

参加しないんじゃない。参加できないのだ。


劇場に入ってすぐに、実君たちが何処にいるのかを、暗がりの中で見つけてしまったせいで、映画には全然集中できなかった。

上映中は真っ暗で、離れた席の実君の表情は全く見えない。

でも、実君は今どんな顔をしているんだろう。

もしかしたら、暗くてお互い気づいていないだけで、目があっていたりして。

そんなことを考えていた。


目が合っているのかも、なんて、自意識過剰すぎると自覚している。

それでも、そんな期待をしてしまうのだから、自分じゃどうしようもないんだ。


映画はいつの間にか終わってしまい、明るくなった。

実君は、クシャっと笑っていて、楽しそうだった。


ねぇ、実君。

もしも、一緒に映画を見たのが私だったら、あなたの隣に座っていたのがこの私だったら、

同じように笑ってくれますか。

私が恋したあなたの笑顔を、私に見せてくれますか。

その笑顔が、私は大好きなんだ。


いつか、実君と同じくらいの笑顔で、実君と２人で、笑いあえたらいいな。

今はこんな距離だけど、やっぱりどうしようもなくあなたが好きです。

改めてそう自覚したのに、今あなたの隣に他の子がいるなんて。


苦しい。


あなたのことをどうしようもなく好きなのと同じくらい、どうしようもなく苦しい。

だから、絶対叶えてみせる。

この恋を、いつか実らせてみせる。

実君、そこで待っていてくれませんか。

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