chewing gum

#12 ページ12

side_Taiga




30分ぶりのお月様は相変わらずほんわりと

辺りを照らしている。


かなり堂々と家を出たが、誰とも顔を合わすこと

なく、誰にも気づかれることはなかった。


とりあえずスマホと財布を持って出たが、

これからどうしようか。


行く宛てなんて、もちろんない。


慎太郎の家…と考えたが、慎太郎の親から

俺の親へと連絡がいきそうだ。


友だちがいればよかったと初めて思う。


とりあえず近所の公園のブランコに乗り、

夜空を見上げた。


お月様のせいで星は見えないけれど、

それでも見上げるに値する夜空だ。


「…ねぇキミ」


突然、背後から声をかけられ肩がビクッと

反応する。


前にもあった、こんなこと…

けど、今の声は樹じゃない。


振り向くと、ガラの悪い男が2人突っ立っている。


「なにしてんの？こんな時間に」


「家出？俺らが遊んであげよっか？」


男に手首を掴まれ、無理やりどこかへ連れて

いかれそうになる。


俺はあるだけの力全てで踏ん張るが、もちろん

力で勝てるわけがない。


「…なにしてんの？」


もう諦めようとした時、聞いたことのある声が

耳に届いた。


「…じゅ、樹さんっ」


「それ、俺のなんだけど」


「…え？」


「俺と待ち合わせしてたの。ねー？大我」


「え…あ、うん…」


「…す、すみません！」


男たちは俺から手を離し、樹に平謝りすると早々に

走って逃げ去った。


残された俺はただ呆然と立ち尽くすしかない。


すると樹はゆっくりと俺の元へ歩いてきた。


「なにしてんの？こんな時間に」


「……い、家出」


「…ふーん」


「さっきの人たち…知り合いなの？」


「前に負かしたことある。ただの傘下の一員」


「…さんか？」


「あー…まぁ、俺より弱い奴ってこと。

それよりさ、これからどーすんの？」


「…わかんない」


「…帰んの？」


「帰らない」


初めての家出、こんなことで諦められない。


「なら、うち来る？」


「え…っ」


樹は「来るならついて来い」と言わんばかりに、

俺に背を向けて歩きだした。




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