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#11 ページ11

side_Taiga




予備校からの帰り道、お月様に見守られながら

たどり着いた我が家。


豪邸と呼ぶには至らずとも、それでもそこそこ

良い家に、俺は父親と母親の3人暮らし。


「…ただいま」


玄関でそう言っても、バカ広いせいで誰の耳にも

届いていない。


俺は迷わず真っ先に2階の自室に入り、

ボフッとベッドに倒れ込んだ。


このまま夢の中へ…といきたいところだが、

明日の予習をしなければ。


大きなため息をつくと、ベッドからはみ出た足元で

なにやらゴソゴソ動く物体。


「あんず〜」


名前を呼ぶと嬉しそうにしっぽを振る、

ヨークシャーテリアの女の子。


俺を癒してくれる唯一の存在。


あんずを抱え、思いっきり顔をスリスリすれば

嫌なことも忘れられる。


俺はあんずに向かってひたすら話をする時間が

好きだ。


あんずは否定も肯定もせず、俺の話を聞いて

くれるから。


「…俺さ、最近モヤモヤするんだ」


「……松村くんに言われとこと、

気にしてるんだと思う」


運良く幸せになった人…か。


確かに間違いではない。


こうして広い部屋で暮らせて、愛犬がいて、

予備校にまで通わせてもらってる。


それはもちろん親のお金のおかげだ。


でも、お金があるから幸せなのか…

それは違うと思う。


現に俺は今、胸を張って幸せだとは言えない。


俺は帰ったら「おかえり」と言われたい。


夕飯だって家族みんなで食べたいし、たまには

お出かけとかしてみたい。


そんな、たぶん松村くんにとっては

くだらないことだと思うけど、

俺はそうゆうのが幸せなんだと思う。


だから、俺は…


「…幸せじゃないのにね」


あんずは首を傾げ、キュルンとつぶらな瞳を

俺に向ける。


「…あんず、内緒できる?」


そう言って俺は立ち上がり、椅子にかけてある

カーディガンを羽織った。


「……ちょっと、家出してみるね」




.

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Ab - Chewing gumすごく面白かったです! 一番好きな部分は樹がいなくなったあとのきょもほくの部分です! 終わり方は本編の方が好きだけど、おまけのもとても悲しいというか…切ない気持ちになりました!読み終わってしまったので、続編期待です(*´∇`) (2020年6月4日 22時) (レス) id: e4fda0cb3d (このIDを非表示/違反報告)
りー、(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごく引き込まれて、最後号泣しました、、また読ませていただきます! (2020年4月27日 0時) (レス) id: 58a48f28a2 (このIDを非表示/違反報告)
E2pcw68JoClAW94(プロフ) - 最後に素晴らしい作品と出会えてとても嬉しく思っています!!新作も読ませていただきます! (2020年4月2日 9時) (レス) id: 73e14c48e0 (このIDを非表示/違反報告)
E2pcw68JoClAW94(プロフ) - 完結おめでとうございます!どちらの終わり方もきょもと樹らしい終わり方だなと思います!44の最後の細身の男性は誰だったのか気になります。慎太郎なのかなと思う気持ちと細身だから違うのかという気持ちがあり、気になってしまい質問させていただきました! (2020年4月2日 9時) (レス) id: 73e14c48e0 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 完結おめでとうございます。そして素敵な作品をありがとうございました。きょも樹が大好きでこの作品は特に引き込まれました。ぜひまた機会があればきょも樹の作品を作って欲しいです。これからも頑張ってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: d7589ab1a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さいか | 作成日時:2019年9月15日 16時

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