四つ葉のクローバーは知っている

意思 ページ45

翼の澄んだ目はいつもよりずっと真剣で。




でも...

さすがに。




「ごめん、いくら昔付き合ってたとしても記憶ないし今は和典と付き合ってるわけだし...」




だから無理って言おうとしたその時、驚いたことに。


和典が口を開いた。




「待って。」


びっくりして和典を見ると和典はあのキーホルダーを取りだした。



さっき私の診察書と一緒に出したやつだ。



「これ。」


和典はキーホルダーを指さす。



「事故る前、彩がつんで俺にくれたやつなんだ。」



よく見るとキーホルダーの中の四つ葉は枯れ果てて、もう緑からはほど遠い色になっていた。




「だから...彩。」


和典は私をしっかりと見据えるとキーホルダーをじっと握りしめ、私に渡してきた。




「これしっかりみろ。何か思い出すかもしんねーから。」


え？




「...お医者さんがね。」


口を開いたのは翼。



「何か事故の時に持ってた印象的なものとか見れば、記憶が思い出すかも、って。」



ああ...


なるほどね。




失われた記憶を取りもどしたい気持ちと、思い出したくない気持ちが波のように揺れる。




でも...和典が...



そう思っていると。



「彩、俺のことはいいから思い出せそうなら思い出せ。」




和典がそう言った。

下を向きながら、でもはっきりと。



「俺はこいつと正々堂々と勝負してーから。」





心臓がとくん、という音を立てる。

和典...



「ほんとに？」



和典は小さくうなずく。




じゃあ...


私は和典がくれたキーホルダーを見つめる。


その四つ葉の葉脈の一本一本が見えるほどじっと。







すると。







時計の針がかちっとなった次の瞬間。







信じられないことに。







頭の中の記憶の時間軸が全てずれて行った。



そして新しい、見たことのない記憶が入れられていく。





見えるのは映画のようなビジョン。



「アーヤ。」

「ん？」

「俺...アーヤのことずっと前から好きだったんだけど。」

「っへ！？」



「俺と付き合ってくれない？」




記憶が変わる。


「翼！

ごめんね、またせて。」

「大事な彼女のためならいくらでもまてますよ。」

「っ！もう翼、からかうのはやめて！」


そう言いながらも2人は手もつないでいて...



そして。


「アーヤ...ううん、彩。」

「...はい。」

「俺の隣で一生笑っててくれない？」



夜空がきれいな海の下。




全部。

全部。





「思い出した...」

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