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和典と目がもう一度あって、その目に訴えかける。


すると。



和典は諦めたように大きなため息をついて

「わーったよ…」

とぼやいた。




ほっと胸をなでおろし、ありがとう、とお礼を言う。




「昔から姫の言うことは絶対だもんね…」




そうクスッと笑う翼を横に和典は立ち上がった。



そして電話がおいてある小さなテーブルの下にある引き出しに行き、何かを慎重な趣で取り出す。





…なんだろ。


不思議に思いながら首を目一杯伸ばすけど見えない。



そして和典はしっかりと引き出しを閉めるともう一度こちらに戻ってきた。




椅子にどすっと座りこちらを真っ直ぐ見つめる。


そしてこう口を開いた。



「いいか、彩。
これは受け止めきれない現実かもしれねーぞ。それでも聞きたいのか?」



しっかりと頷く。



知らない方が嫌だ。

そんなに私は弱くないよ。




それを聞いて和典は静かに頷く。




「わかった。」




そう言うと、机の上に取り出したのは透明なファイルと小さな四つ葉のキーホルダー。


ファイルには何か紙が入ってる。



…北原…き、緊急…病院…

患者名は…立花彩。


紙は私から反対の向きだったからそうかろうじて読めたけど時間はかかった。





私が緊急病院に…?

なんでだっけ。



「彩。」


和典は大きく息を吸うと、吐き出すと同時にこう口に出した。



「お前は…四年前の5月24日、午後2時43分に交通事故にあってる。うちから一番近い桶中公園の近くで、だ。理由は…」


「俺を助けるため。」


あとを続けたのは翼。




でもそんなことより私は和典の言ってることが理解出来なかった。



…事故?


そんなの身に覚えがない。



「え…そんなの知らないよ、覚えてないし。冗談でしょ?」




少し笑いながらそう口にする。



冗談じゃないのは二人の目の真剣さでわかってたんだけどね。

違う、って言ってもらいたかった。




でも…



「アーヤ、ごめん、これ本当。」



翼の悲痛な目はどうしても演技には見えなかった。


どう…して…




「これからその日のこと話すから、きちんと聞いてて。」



そう言われて、私は頷くことしかできなかった。




☆☆☆


5月24日。

午後2時。


これは私と和典がその日に約束してた待ち合わせ時間。


時計塔の前で時間ピッタリにきた私は和典と桶中公園に向かったらしい。



四年前だから大学一年生の時。

そういえばKZで同窓会しよう、とか若武が言ってたっけ。

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M(プロフ) - このお話大好きです! ほんとに何回も読んでるんです🫰🏻💗 素晴らしい作品を作って頂きありがとうございます!! (2022年11月27日 1時) (レス) @page50 id: 774f7e13f3 (このIDを非表示/違反報告)
riorio21 - 奏さんの作品面白いし、感動するし、楽しみにしてます‼︎これからも頑張ってください‼︎ (2022年6月12日 12時) (レス) @page50 id: 58b56bfa9f (このIDを非表示/違反報告)
心結 - 本当に本当にとっても面白かったです‼奏さんの作品、私大好きです‼これからも頑張ってください‼ (2022年3月22日 20時) (レス) @page49 id: 8499dda6bc (このIDを非表示/違反報告)
上杉奏(プロフ) - 翠雨さん» ありがとうございます!応援取っても励みになります!他の作品も頑張りますー! (2018年8月23日 16時) (レス) id: ee0f7784b7 (このIDを非表示/違反報告)
翠雨 - とても面白かったです!これからも頑張ってください(*^^*) (2018年8月22日 18時) (レス) id: aab040c059 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:上杉奏 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aishou_kz  
作成日時:2018年4月23日 17時

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