四つ葉のクローバーは知っている

＊ ページ42

...え？


耳を疑うってまさにこんな感じ。

絶対違うと思いたいし、違うだろうけど。



今、結婚してっていった？


え？


意味が分からない。


本当に。



え？


混乱してどんどん頭が働かなくなるのを感じる。




頭に残ってぐるぐる回るのは翼のあの言葉だけ。





オレトケッコンシテ？




...本気？




ああもうだめ！

頭がパンクしそう！





そう思った瞬間。


大きなばん、という音で私の意識は現実に戻ってきた。







和典だ。


椅子を蹴飛ばして翼の胸ぐらをがっとつかんでいる。




そしてこう大声を上げていた。






「お前...お前こっちにのこのこと戻ってきたと思ったら最初にやるのがこれか！？

それはルール違反じゃねーのかよ！


そもそも彩の気持ち一個も考えてねーだろ！

このクソが！」






今までで。

ここ何年も付き合ってきた中で一番怒ってた。


顔を真っ赤にさせて。

大声を出していた。




でも。



...ルール違反？


確かに和典はそう言っていた。




なんのこと？


ルール？




私がじっと考えている間にも翼と和典の論争は続いた。



「まあまあ落ち着いて、こっちにも事情が...」


「は？落ち着いて？
お前マジで言ってんの？頭おかしいんじゃない？

同棲までしてる彼女が言いよられてるんだぞ？よりによってお前みたいな...」


「何？俺みたいな無責任なチャラ男にって？」


「そんなことは一言もいってねーだろ！大体」



あ、あの2人ともヒートアップしすぎ...

まあ当然なのかもしれない、けど。




私の中にある疑問が浮かんだ。


それは風船みたいに私の脳裏をうろついて離れない。




どうしよう。

これを聞いたら...ダメってなんか予感がする。



でも。



...でも。





「待って。」




そう言った声は自分でも驚くほど冷静で。


さっきまで争っていた2人もピタッと口をつぐんだ。



ふぅ...

人からはよく鈍感って言われる私でもこれくらいわかるって。



「和典。」

和典のほうをじっと見つめる。


そして次に。


「翼。」




「2人とも何か私に隠してるでしょ。」



びくっとしたように体を震わせ弁解するように立ち上がる和典。


「違うこれは...」


「違くない。

どちらにしろ私にかかわってることなんでしょ？」



そう言うと和典はうっと言葉に詰まり、困ったように翼を見た。

肩をすくめる翼。



ほらやっぱり。



「それなら私にだって知る権利はある。


ねぇ和典、翼。お願い。」

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