風にさらわれて�� ページ43
『清海A』
そのままひったくりの腕の中から出たバッグをキャッチして、傷がつかないよう抱え込むと、地面に受け身をとる。
ひったくりのサングラスが取れて、男の顔がのぞいた。
男は気が狂ったように私に襲いかかってくる。
けど、その拳は私に届くことはなかった。
『……薫さん。』
「もー、ほんっと危ない。」
薫さんが後ろから男を押さえつけた。
そして、周りの人に警察に連絡するようお願いする。
「Aちゃんはほら、あっち。」
『はい。』
私は、被害に遭った女の人に向かって走る。
バッグを渡すと、泣きながらお礼を言われた。
どうやら、自身の息子が誕生日に贈ってくれた物らしい。
その足で私は、さっき女性を撮影していた輩のところに行く。
『……あの、』
「？ なんすか？」
『さっきの動画、消してください。』
「はい？」
半笑いで「何言ってんのこいつ」と取り巻きの奴らと話しながら、スマホを触る。
加害者を撮影して警察に出すならまだしも、被害者を撮って嘲笑うなんて許されることではない。
『肖像権の侵害です。求めれば慰謝料だって払ってもらえる。学生さんみたいですけど大丈夫ですか？』
「……っち、わぁったよ。これで良いんだろ。」
私の目の前で動画を消してもらって、保存も送信もしていないことを確認する。
私がお辞儀をし、にこやかな笑みを浮かべると、不快そうにまた舌打ちをして去っていった。
「Aちゃん法律とか詳しかったの？」
『！ いえ、口から出まかせです。慰謝料なんて貰えないことのほうが多いんじゃないですか。』
「……そっか」
『けどやっぱりあのままだと目覚め悪いんで。あの人のバッグには幸せな思い出だけが宿ってればいいんです。』
「……」
『あ、私の自転車どこですか？』
「えっ、ああ。あそこに鍵かけて置いてる。……はい。」
『ども』
薫さんから自転車の鍵を受け取って、そっちに向かって歩いていく。
薫さんはアイドルなのに、目立つことをさせてしまった。
それこそ薫さんの方が動画に撮られてSNSに晒される可能性が高いのに……
私だけでどうにかしなきゃいけないことだったのに。
「ね、Aちゃん。」
『!? ……あ、はい。』
自転車の鍵をさしていると、目の前に薫さんが現れる。
怒られる…
そう思った時、薫さんの口から出てきた言葉は、
「何で、ひとりで行っちゃったの。」
たしかに怒りを孕んだ優しい言葉だった。
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一織(プロフ) - 生しょうがさん» 返信ありがとうございます！！ぜひぜひこれからも応援させてください…！！ (2022年8月13日 23時) (
レス) id: a117ee3fb5 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが - ♡ろぉる♡さん» コメントありがとうございます！一番だなんて…！嬉しいです！これからも応援よろしくお願いします！ (2022年8月13日 18時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
♡ろぉる♡ - すごい好みの作品です！今までで一番好きです！更新頑張ってください！ (2022年8月13日 17時) (レス) @page26 id: fb36bde41e (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが - 一織さん» ありがとうございます！良ければこれからも応援してくださると嬉しいです！ (2022年8月13日 11時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
一織(プロフ) - 初コメ失礼します、すごく好みな作品にやっと出会えました！ありがとうございます！ (2022年8月11日 23時) (レス) @page13 id: a117ee3fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生しょうが x他1人 | 作成日時：2022年8月11日 14時
