帰り道�� ページ15
『清海A』
『『色』が……ない？』
「うーん、これも違います。Aの『色』は空っぽなんです。」
宙は私の自転車を手押ししながら歩いていくが、私の足はそこで止まる。
不思議そうに振り向いた宙の顔には悪気なんてなくて、余計に私の心は重くなった。
「A？ 気にしなくても大丈夫な〜、宙が少し変な感じするだけなので！」
『空っぽ、か。たしかにそうかもな。』
「……A？」
『少し話聞けよ。帰る間だけ、さ？』
笑ってそう言うと、宙は心配そうに眉をひそめながらもうなずいた。
ーーー…
『私はさ、小さい頃母さんみたいになりたかった。』
子どもの目には、キラキラした舞台に立って沢山の人を感動させていた母さんはお星様みたいに綺麗なもので。
『私、母さんみたいになりたい！』って、母さんの知り合いに会う度宣言した。
けど、周りの大人はいつでも子どものただの戯言としか受け取らなかった。
演技の稽古で自分の時間が減っていくほど、周りの目は生ぬるく、気色の悪いものに変わっていった。
『私には才能があったみたいだ。自分で見てても上手いと思っちゃうくらいに。でも……母さんみたいにはいつまで経ってもなれない。』
____「あの人は天才だからね〜」
____「Aちゃんも、絶対良い役者になるよ！」
励ましの言葉は全部、ナイフのように私の心に突き刺さり続けた。
私にとって母さんは道標だった。
けど、ずっとそばにいてくれたはずの母さんは、私じゃ手が届かない高みにいたんだ。
それをわかっていたはずなのに、わかっていなかったんだと思う。
私はある日、自分の生きる意味を忘れた。
「……」
『これでも、半年前くらいまで不登校極めてたんだからな？』
演技をしてると、自分が生きてるって実感する。
でもそれがなくなってから、私が喧嘩にその感覚を求めるようになるのは時間がかからなかった。
『殴って蹴って殴って蹴って……まるでドラマでも撮ってる気分だった。』
つけられた傷が痛む度、自分が生きてるって感じる。
仲間を守るとき、自分が生きてる意味を感じる。
不良でいることは私の生きがいで、母さんに当たらないようストレス発散する良い立場だったんだ。
『けどその生きがいも無くした日、私から何かが抜け落ちた気がしたんだ。……『色』ってやつだろーな。』
怖くて、宙の顔が見れない。
自分の声がどんどん震えていく。
『私は今、空っぽだ。』
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一織(プロフ) - 生しょうがさん» 返信ありがとうございます！！ぜひぜひこれからも応援させてください…！！ (2022年8月13日 23時) (
レス) id: a117ee3fb5 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが - ♡ろぉる♡さん» コメントありがとうございます！一番だなんて…！嬉しいです！これからも応援よろしくお願いします！ (2022年8月13日 18時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
♡ろぉる♡ - すごい好みの作品です！今までで一番好きです！更新頑張ってください！ (2022年8月13日 17時) (レス) @page26 id: fb36bde41e (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが - 一織さん» ありがとうございます！良ければこれからも応援してくださると嬉しいです！ (2022年8月13日 11時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
一織(プロフ) - 初コメ失礼します、すごく好みな作品にやっと出会えました！ありがとうございます！ (2022年8月11日 23時) (レス) @page13 id: a117ee3fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生しょうが x他1人 | 作成日時：2022年8月11日 14時
