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「全てを失う」って小説とかドラマの中では使い古されたフレーズだけど、まさか自分がそんな状況に置かれるなんて思ってもみなかったから心底驚いた。
少し前まで都心の新築マンションの最上階に婚約者と住んでいたのに、今は住むところも仕事もなにもないつまらない人間だった。
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『ごめん、子どもができたんだ。結婚はなかったことにしてほしい』
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長く社内恋愛をしていた彼と婚約して、仕事を辞めて、2ヶ月もたたないうちにそんなことになった。
そういえば最近家を空ける事が多かったなぁ。でも仕事が忙しいって言ってたのに。
相手の女の子は会社の後輩だった。
泣いたり怒ったり騒いだり、とにかくできる限りのことをやったけど、
『子ども』という圧倒的事実の前にはもう成す術がなく、
だったら法的手段を、とうらみつらみに満ちた地縛霊みたいな目で弁護士について調べ始めたら、
相場で貰えそうな慰謝料を軽く超える額がぽん、と振り込まれて、もうそれで全部終わってしまった。
2人で選んだお気に入りのインテリアも、私の城、と勝手に呼んでいたアイランドキッチンも、大企業に勤める旦那様を持つ専業主婦の肩書きも、私を構成する全てのものがあっという間に消えてなくなった。
まだ籍を入れていなかったことが不幸中の幸いだ、なんて思う私はポジティブ過ぎるだろうか。
全てを手に入れた気になっていたけど、自分の手で掴んだものは何もなかったんだと、その時やっと分かった。
あとに残ったのは、20代も終盤に差し掛かって、心の真ん中の大事なところがすっぽり抜け落ちてしまった私だけだった。
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新しい部屋を借りる元気もなかったので、しばらくは友達の家を転々としていたのだけれど、さすがに申し訳なくなってきて、
住み込みで働ける場所があったら、と検索して辿り着いたのが、東京から新幹線で１時間と少し行った先にある、自然豊かなその街の小さなゲストハウスだった。
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ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです！ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています！ (2022年1月3日 0時) (
レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2021年5月1日 15時
