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その日は、朝から土砂降りの雨が降っていた。
まるで私の心の中みたいだと思った。
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A「ここかな…?」
スマホの地図と、目の前にあったその建物を何度も確認する。
どう見ても宿っていうより古民家だけど。
路地裏にあったその場所は、あまりにも住宅街に馴染んでいたので途中何度か通り過ぎてしまい、辿り着くまでに結構な時間を要した。
一応傘をさしていたけれど、濡れていないのは頭くらいかな。寒い。
よく見たら表に小さく看板が出ていた。
“guest house 622”
やっぱりここだ。合っていた。
ほんの少しの緊張をぎゅっと飲み込んで、すりガラスの引き戸に手をかけた瞬間、
中から賑やかな声がして、暖かいランプの光が漏れてきた。
カウンターの内側から賑やかな空間を楽しそうに見つめていた、小柄でショートカットのよく似合う可愛らしい女の人が、私に気付いてにっこり笑った。
「ご宿泊ですか?」
A「すみません、明日からこちらで働かせていただく者なのですが…」
「あぁ、住み込みの!こちらへどうぞ」
A「失礼します…」
こわごわと建物の中に入る。
古民家をリノベーションして作られたそのゲストハウスは、一階が宿泊者の共用スペースで、
大きな皮張りのソファや、皆で囲める大きな木のテーブルが置いてあり、奥がカウンターキッチンになっていた。
週末ということもあり、宿泊者たちで盛り上がる館内。
年齢も性別も国籍も様々な人たちが、ごちゃっと集まって、お酒を飲みながら談笑している。
とんでもなく場違いなところに来てしまったような心細さを感じる。
でも自分で決めたんだ、ゼロから全部やり直したいって。
A「今日からお世話になります。安達Aです。よろしくお願いします…!」
OL時代に鍛えられた礼儀作法で45度のお辞儀をキメて顔を上げたら、
宿の主であるその女の人は、きょとん、とそれを見つめ、それからすぐにふんわりと笑った。
「こちらこそ、よろしく」
差し出された手をおずおずと握ったら、泣けちゃうくらいにあたたかくて、
私はその時の温度を、これからもずっと忘れないだろうと思った。
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ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです!ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています! (2022年1月3日 0時) (レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2021年5月1日 15時