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慧くんが宿のラウンジに飛び込んで来たのは、21時を少し過ぎた頃だった。
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その日は平日の夜でお客さんも比較的少なく、みんながそれぞれの場所で思い思いに過ごしていた。出張で来たサラリーマンのおじさんがビール片手に仕事してたり、一人旅中の女の子がソファで小説を読んでたり。その日のお客さんによって、ラウンジの空気が全く異なるものになるのは面白いなぁと思う。
そんな落ち着いた雰囲気のラウンジをカウンターからのんびり眺めていた時、ドアベルがカランコロンと大きく鳴った。
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慧「怪我したって…?」
A「あぁ、これ?怪我っていっても本当にちょっとだよ?」
宿に飛び込んで来た彼は、なんだかひどく疲れた顔をしていた。急いで来てくれたのか、厚めの前髪がぱかんと割れている。
私の肘に貼られた絆創膏を目にした彼は、ますますしゅんとした様子で深いため息をついた。
慧「…ごめん。花枝さんから全部聞いた…、」
A「気にしないで?全然大したことないから」
慧「大したことあるよ…!」
A「うーん。じゃぁ痕が残ったら責任取ってもらおうかな?」
慧「もちろん」
随分と落ち込んでいる様子だったので冗談のつもりでそう言ったのに、めちゃくちゃ真剣なトーンで返されてしまって面食らう。
慧「Aちゃん今日ラストまで?」
A「そうだよ」
慧「じゃぁ終わるまで待ってる。少し話したいし」
A「そんなことして彼女が怒らない?」
慧「さっき振られたからもう平気…、」
A「はっ!そうか…!なんかごめん」
慧「Aちゃんのせいじゃない」
彼は苦笑いしながらラウンジのテーブルに座り、バックパックからノートパソコンを取り出した。
慧「時間まで仕事してくわ」
A「ごゆっくり」
彼はにこりと頷くと、眼鏡をかけてパソコンに向かった。
ちらりと見える画面にはどうやら図面が書いてあるようだ。
あ、仕事モードの顔してる。
画面に向かう、いつものふわふわした笑顔とは違う落ち着いた大人の男の人みたいな横顔を見ながら、こっそりどきっとしてしまったのは内緒の話。
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ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです!ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています! (2022年1月3日 0時) (レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2021年5月1日 15時