#22 ページ23
そんなふうに穏やかな日々を過ごしていたある日、事件は起きた。
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それはチェックインが始まる少し前の時間。館内清掃も終えて、花枝さんとラウンジでコーヒーを飲んでいた時のこと。
ドアのベルがカランと鳴って、女の人が1人入って来た。
花枝「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」
少し早いがチェックインだろうか?年齢は20代前半くらい。ツイード素材のミニワンピースに身を包み、長い栗色の髪をふんわりと巻いているその姿は、この宿に泊まりに来るお客さんにはあまりいないタイプだ。
花枝さんの問いかけには答えずに、彼女はラウンジをじろりと見回して、棘のある声色でこう言った。
「慧の家に居候してる人がここで働いてるって聞いたんですけど」
A「あ、私ですか?」
だけどすっかり平和ボケしていた私は、その時彼女がこちらに向けていたどす黒い感情なんて少しもキャッチせずに、
カウンターの奥からのこのこと顔を出してしまった。
「あなたが…、」
上から下までじろりと眺められて、急に居心地の悪い気持ちになる。
あれ、何かまずい空気かしらと察した頃には、もう彼女はラウンジにずかずかと入り込んで来ていた。
「単刀直入に聞きますけど、慧とどういうご関係ですか?」
A「はい?関係、と言いますと?」
何が何だか分からず瞬きをしたら、その女の子はち、と小さく舌打ちをした。
「とぼけないでよ!家に押しかけるとか図々しくない?!迷惑とか考えないの?」
急に怒鳴られた。ん?急に押しかけているのはどちらかと言うと今のあなたでは?と思ったがそこは寸前で飲み込んだ。
A「えっと…、すみません、あなたは誰ですか?」
「慧の彼女です」
A「はっ…!彼女、いたんだ…、」
それはあまりに予想していない言葉だったので、咄嗟に心の声がダダ漏れた。
そりゃそうか、あれだけかっこよくて仕事できて優しければ、彼女がいない方がおかしいぞ。
なのに何故かそういう類の人がいないと勝手に思い込んでいた。なんでだろ。そういう話題が彼の方から全く聞かれなかったからかな…、
だけどこの私の言い方がますます彼女の癪に触ったらしく、ばさばさしたまつ毛のお人形のような瞳がみるみるうちにつり上がっていく。
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ゐ(プロフ) - スロモからあっという間に時が経ちましたが、今年もちゃみさんの大ファンです!ビタシュガ続きの展開も楽しみにしています! (2022年1月3日 0時) (レス) @page47 id: e880b33f36 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - やっと、慧くんがいい感じですね。 (2022年1月1日 20時) (レス) @page47 id: a1f6031022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2021年5月1日 15時