【探偵チームKZ事件ノート×カゲプロ】紅い目の能力者は知っている

買い出しへ ページ8

「A、悪いが今手を離せなくてな。代わりに買い出しへ行ってきてもらえるか？」


キドからそう言われたのは数十分前。どうやら今日の夕飯に使うための食材が足りなかった様で、しかも今は他の事をしていて手が離せずにいたそうだ。


そこでたまたま通りかかった私に買い出しを頼んだというわけだ。


キドによると、近所のショッピングモールで野菜の特売、調味料類の半額セールスが実施されるらしく、そこで買ってきてほしいとのこと。


ヒヨリでも連れていって、ついでに好きな店でも寄って何か買うといい。買い出しへ代わりに行ってくれるお礼だ。


キドに優しい言葉をかけてもらったが、生憎ヒヨリは駅周辺のアクセサリーショップへと行ってしまっていた。愛用しているヘアゴムがほうつれてきてしまったらしい。


せっかく寄り道も許されたのだし、誰かと一緒に行きたいな、と考えている時、ソファからこちらを覗くマリーと目があった。


私とキドの会話を聞いていたのか、羨ましそうな目でこちらを見てくるマリー。この視線に勝てるなんていう人がいたら拝んで差し上げよう。


「マリー、一緒に行く？」


私が問えば、マリーはソファから身を乗り出し、即座に答えた。


「うんっ！」


キドにマリーと行ってくるということを伝え、私はほわほわとした笑顔を浮かべたマリーを引き連れてアジトを出発した。


これが今までの出来事。


ほがらかな春の陽気が、この後巻き起こる小さな事件の前触れ。嵐の前の静けさというやつだ。


もちろん私はそんな事件が起こるなんてことを知るよしもない。

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