トライアングル age16 ページ48
私の背が低いせいで,どうしてもイヤホンが私側へ引っ張られてしまう。高尾は耳からイヤホンがずれないようにと,私のすぐ近くへ顔を寄せてきた。リズムに合わせて,高尾の指先が微かに動いている。高尾「綾瀬は,曲を覚えないでとりあえず動くから,間違えるんだよ」花日「う,うん・・・・・・」折角のアドバイスも,耳を素通りしてしまう。顔が近い。それだけでドキドキしてしまって,曲なんか頭に入らないよ。だって,こんな近くに高尾がいるんだもん・・・・・・。高尾「綾瀬」はっと顔を上げたら,イヤホンのコードがぴんと張ってしまった。花日「あ・・・・・・」私は咄嗟にイヤホンをしている方の耳に手をやった。それと同時に,高尾も自分の耳元を手で押えた。私の右手の甲にふわっと,高尾の髪が当たった。花日「・・・・・・・・・!」思わず動きが止まる。前を向いたまま,私の体は固まってしまった。風に揺れる高尾の髪が,すごく柔らかい・・・・・・。高尾の匂いがする。レモンとミントが混ざったみたいな,私の知らない服の匂い。ドキドキがとまらない。どうしよう。こんなに近くにいたら,心臓の音高尾に聞こえちゃう・・・・・・!かーっと頭のてっぺんまで赤くなってしまった私に,高尾がぽつりと言った。高尾「綾瀬。昔,堤と仲良かったの?」えっ?ぎゅっと瞑っていた目を開いて隣を見たら,高尾が何故か,ちょっとだけ不安そうな顔をしていた。昔って,幼稚園の時の話だよね?それなら仲良いどころか,いっつも酷い事されて,泣かされてばかりだった気がするけど・・・・・・。質問の意味がわからなくて,頭の上に「?」マークを飛ばしてしまった私に,説明を加えるみたいに高尾が続けた。高尾「堤に友達作ってあげようと,頑張ってるし」花日「あ・・・・・・それは・・・・・・。堤君,うちの学校馬鹿にしてて。そういうの,イヤだから・・・・・・」誰とも仲良くする気はないって言ってた堤君が,何故か寂しそうだったから。堤君が,私達と友達になってくれたら嬉しいな,って思ったから。花日「高尾とか,結衣ちゃんとか,私の大好きな人達の事・・・・・・嫌って欲しくなくて・・・・・・」一生懸命話したら,高尾はにっこり笑った。高尾「ちょっと,安心した。・・・・・・頑張れよ」イヤホンをしたまま,おでこをこつんとくっつけて,励ましてくれた。くっついたところから,優しい気持ちが流れ込んでくるみたいに。この人が彼氏で良かった。高尾の事,もっと知りたいな・・・・・・。
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作成日時:2022年10月3日 0時