コクハク age17 ページ4
椅子に浅く腰掛けて,ぼんやりしている。作業しながらしばらく観察していたけれど,私がクレープの皮の元を準備している間も,フライパンに油を引いている時も,桧山はなんにもしていなかった。結衣「桧山,サボんないで!」声をかけてみると,桧山は「いま休憩ちゅーう」とだるそうに答える。結衣「さっきからずっとじゃん」あきれてしまった。自分の持ち場を班の子に任せて桧山のもとへ行ってみると,何故かムッとした顔で私を見た。桧山「蒼井さぁ」結衣「ん?」桧山は,調理台で焼いているクレープを顎でしゃくった。桧山「それ,さっき言ってた『好きな奴』にやるの?」心臓がドキンと高鳴った。まりんとの会話,やっぱり聞かれていたんだ!でも,この質問に私はどう答えればいいんだろう・・・・・・。さすがに,その「好き」の相手は桧山だよ,とは言い出せなくて口篭る。結衣「あ・・・・・・げ・・・・・・たい,よ?」こんな言い方で本人に告白するなんて,恥ずかしすぎて頬が火照った。桧山「・・・・・・・・・」黙り込んだ桧山は,何故か凄く不機嫌そうだ。と,そこへ別の班の女子がふたり,連れ立ってやってきた。「ねーねー桧山ー!この子が桧山にクレープ渡したいんだって!」直球。そして先に桧山に話しかけていたのに,私ったら完全に出遅れちゃった・・・・・・。いきなり言わないでよー,と照れながら,もうひとりが上目遣いで桧山を見る。「だから放課後,ね?」桧山「いらね」即答。告白の約束を取り付けにきた相手に,桧山は不機嫌そうな表情を隠しもしない。桧山「そんなの貰ってもオレ,嬉しくもなんともないから。他の奴にやれば?」女の子達は「ひどーい」と言いながらも,そっぽを向いたままの桧山にフォローする気がまるでないとわかると,諦めて自分の班へと戻って行った。でも,諦められないのは私だ。結衣「何それ・・・・・・そんな言い方ないでしょ?桧山にあげたくて作ったのに・・・・・・」桧山があの子に投げた言葉が,カッターの刃みたいになって私の胸に刺さっていた。結衣「ありがとって・・・・・・笑って欲しくて,頑張って作ったのに・・・・・・」桧山「へぇ,蒼井が渡す奴はそんな優しい王子様なんだ。よかったな,オレと違って」違う。全然違う。なのに,何処から説明したらいいのか・・・・・・もうわからない。結衣「ありがとうくらい言えないの!?」桧山「じゃあなんだよ!」窓ガラスがびりびりする程の大声。皆の視線が一斉に集まった。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:赤司蓮華 | 作者ホームページ:蓮華のホームページ?by赤司 そんなものはありませんby黒子 相変わらず息ぴったりbyキ...
作成日時:2022年10月3日 0時