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凛月
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「誰?」
放課後
Knightsのレッスンがあったけど
あんまり行く気分ではなくて
音楽室で暇を潰していたところだった。
1曲弾き終わったあと
入口から誰かが覗いている気配がして
そんな言葉を投げかけたのだ。
「ご、ごめんねりっちゃん盗み聞きするつもりはなくってね、ただ、あのね.......」
ひょっこりと効果音が着きそうな様子で
入口から顔を出したのは Aだった。
「こんな遅くまで何してるわけ?しかもアイドル科の校舎なんか来て」
「あっ生徒会が長引いちゃって、」
「へぇー、あの男と一緒?」
生徒会という言葉に今日の昼のことを思い出し
咄嗟に出てしまった言葉だった。
自分でも意地の悪い質問だなと思うほど
「あ!佐々木くん?違うよひとりだったの!」
「そう。それで?仕事終わったの」
「うん!!!終わった!」
嬉しそうに満面の笑みをこちらに向けてきた
俺はその顔が一番好きだった。
彼女は人見知りで内気な性格なので
あまり人前でにっこり笑うようなことは無い
愛想笑い程度ならあると思うが
やはりその笑顔が自分だけに向けられている
という所が好きな点のひとつだった。
「一緒に帰ろ」
「うん!あっ、でもまって、」
何か言いたげな彼女はもじもじしながら
こう続けた
「りっちゃんのピアノ最近聞いてなかったから、もう一曲だけ聞きたいなあ、なんて、」
そのお願いがあまりにも
男心をくすぐるようなものだったから
少し照れくさかったが
俺はピアノ椅子に座り
鍵盤を優しく叩いた。
『ノクターン 第2番変ホ長調作品9−2』
この曲の意味はきっと君にはわからないだろうけど
今夜は君だけのために
俺はピアノを弾いた
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作者名:もち子 | 作成日時:2019年5月22日 17時