夢 ページ47
ある日の夜の事。空に輝く満天の星空の下で、見張り台に座ってイゾウさんと語り合う。
吹く風は柔らかくて、私の髪を弄ぶ。
「夢?私の?」
「あぁ」
突然イゾウさんに訊かれて、しばらく考える。
夢なんて持った事はない。夢は、未来がある人が持つものだから。未来があるのかないのか分からなかった私は、昔から、1日1日を生きるので精一杯だった。
「イゾウさんは?」
訊き返すと、彼は星空を仰ぎ見て呟いた。
「オヤジを海賊王にする事」
オヤジさんを海賊王に…。確か、エースもそんなような事を言っていたような気がする。この船に乗った人は皆そういう夢を抱くのだろうか…。
「それ以外はないの?」
「これ以外?」
「うん。もっとこう…個人的な」
すると、イゾウさんは顎に手を当てて考えた。そして私の方をチラリと見たかと思えば、肩を抱き寄せた。
「Aとずっといる事」
距離の近さと、耳元で囁かれた言葉に顔が熱くなる。慌ててイゾウさんを押し返すと、楽しそうに笑って頭を撫でてきた。
「で?お前さんの夢は?」
私はイゾウさんに向けていた顔を正面に向けて、目を閉じた。
「秘密、って言ったらどうする?」
「そりゃあズルイねえ。おれは言ったってのに」
イゾウさんの言う通りだけれど、今の私の夢は言ってもいいものか分からない。
「…皆が幸せでいる事かな」
立ち上がって、広くどこまでも続いている暗い海を眺める。闇が広がる海を見ていると、隣にイゾウさんがいても孤独を感じる。
するとイゾウさんも立ち上がって、私を後ろから抱き締めてきた。
「皆“ が ”じゃない。皆“ で ”だろ」
そんな些細な事に気付かれるとは思わなかった。
「…そうだね」
肯定するしかなかった。否定したら、きっとイゾウさんはわけを聞いてくるだろう。そうしたら私は、更に嘘を重ねなくてはいけない。
「家族って…いいね。温かい」
イゾウさんの腕に触れて、彼に少し体重を預けると、鍛えられた身体を感じる。
「当たり前だ」
この人は海賊。いつ、私の目の前からいなくなってもおかしくはない。
確かに私は未来を知っている。イゾウさんはまだ死なない。だけど、私は望まずにはいられないんだ。
あなたたちの幸せを。あなたたちが傷付かない未来を。
その時、視界の端で星が流れた。
「あっ、流れ星。祈らなきゃ」
イゾウさんの温もりを感じながら星に祈った私の願い。
どうか…叶いますように。
ラッキーアイテム
革ベルト
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
214人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イゾウRAVU - 10才だと五年生ですよ! (2018年12月9日 13時) (レス) id: 0e771d3d36 (このIDを非表示/違反報告)
アベッチ - 面白いです!頑張ってください!! (2018年3月23日 16時) (レス) id: 6605acb6b9 (このIDを非表示/違反報告)
焔彩(プロフ) - コメントありがとうございます!夢主ちゃんは色恋沙汰に関しては純粋すぎるんです。故にイゾウは苦労人だったわけです。 (2018年1月21日 22時) (レス) id: 5e6d9dd208 (このIDを非表示/違反報告)
ミンハオの嫁()(プロフ) - 夢主ちゃん純粋すぎるぅぅ!私なんて、私なんて、小5で知ってましたよぉぉ!!純粋なんて程遠いいいいい!羨ましいわっ!。。ちなみに初コメです笑笑 (2018年1月21日 20時) (レス) id: 48f96f1def (このIDを非表示/違反報告)
juantya_(プロフ) - イゾウがすきなので、こういうストーリー好きです!更新頑張って下さい! (2018年1月14日 12時) (レス) id: 2079238fcf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:焔彩 | 作成日時:2018年1月10日 16時