任せて ページ26
すると、ドタドタと足音が聞こえてきて、エースさんは慌てて食堂を出て行ってしまった。
「A!」
イゾウさんの声が聞こえてそちらを見ると、食堂に入ってきた所だった。
「イゾウさん。どうかしたの?」
クッキーの乗っていないトレーを厨房に置き、新しくイゾウさんのクッキーを乗せて差し出す。
「ありがとな」
クッキーを受け取った彼は、その美しい顔を歪ませた。
「エースの奴がまたいつものだ。いい加減懲りて欲しいもんだ」
私は思わず笑ってしまった。
さっきのエースさんの顔が思い出される。
食べ物を見ていた物欲しげな顔。冷たくて鋭い目を持った顔。何かに怯えているような顔。悲しげな顔。怒った顔。驚いた顔。
表情豊かで繊細な人。昔の私に似ているかと思ったけれど、彼は強い人だ。だって彼はこの世界で生き続けようとしている。
「何笑ってんだよ?」
イゾウさんが不思議そうに私の顔を覗き込んでくる。
「何でもないの。ねぇイゾウさん。彼の事、私に任せてくれない?」
そう言うと、イゾウさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「やめとけ!怪我するぞ!」
「大丈夫。戦う力も持たない私に何かをするとは思えないの」
お願い、と両手を合わせて頼み込めば、渋々了承してくれた。何かされたら誰かに助けを求める事を条件に。
翌朝は早起きをした。甲板で涼しい風を受けていると、頭に手を置かれて犯人を見上げる。そこには、新聞を片手に優しく微笑んでいるマルコがいた。
「おはようさん」
「おはよう、マルコ」
「エースを何とかするんだって?イゾウが珍しく酔ってくだを巻いてやがったよい」
そういえば、イゾウさんが酔った所は見た事がない。やはりお酒には強いのだろうか。
「イゾウはザルだからねい。そうそう酔わねえよい」
私の考えている事が分かったのか、マルコはそう教えてくれる。
私は未成年だからお酒飲めないなぁ…。でも、この世界ってそういう法律ないよね?じゃあ今度少しだけ飲んでみようかな。
すると、扉が乱暴に開けられて甲板に出て来たエースさん。
「扉が壊れたらどうするんだよい、あいつは」
マルコがそう文句を言う。私は彼の手を頭の上からどかすと、小さく手を振ってエースさんの側に行く。
マルコのため息が聞こえた気がしたけど、気にしたらダメだ。
「エースさん」
声をかけると、彼は露骨に嫌そうな顔をした。
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イゾウRAVU - 10才だと五年生ですよ! (2018年12月9日 13時) (レス) id: 0e771d3d36 (このIDを非表示/違反報告)
アベッチ - 面白いです!頑張ってください!! (2018年3月23日 16時) (レス) id: 6605acb6b9 (このIDを非表示/違反報告)
焔彩(プロフ) - コメントありがとうございます!夢主ちゃんは色恋沙汰に関しては純粋すぎるんです。故にイゾウは苦労人だったわけです。 (2018年1月21日 22時) (レス) id: 5e6d9dd208 (このIDを非表示/違反報告)
ミンハオの嫁()(プロフ) - 夢主ちゃん純粋すぎるぅぅ!私なんて、私なんて、小5で知ってましたよぉぉ!!純粋なんて程遠いいいいい!羨ましいわっ!。。ちなみに初コメです笑笑 (2018年1月21日 20時) (レス) id: 48f96f1def (このIDを非表示/違反報告)
juantya_(プロフ) - イゾウがすきなので、こういうストーリー好きです!更新頑張って下さい! (2018年1月14日 12時) (レス) id: 2079238fcf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:焔彩 | 作成日時:2018年1月10日 16時