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「っ!! だ、誰だ」
路地の手前から聞こえるドスの効いた低い声。
目を閉じても、コンクリートを歩くその足音はよく響いた。
「てめぇ妹に手ぇ出して、それでも兄かよ、アァ!?」
「がぁっ!?」
腕の痛みが消えて、ゆっくりと目を開けると、視界に広がる、まるで絵画の中から飛び出してきたかのような、美しい白銀の髪。
「……大丈夫か?」
気絶しているのか、ぐったりとする兄の体を支えながら、白銀の男の人の、宝石のような真っ赤な瞳に見つめられる。
大丈夫だと答えると、彼は兄を担いで裏路地を出ていく。
まずい、そっちの方向には、さっきの男たちが……
「あ、あの!! そっちは」
「……銃兎ォ、こっちはもう片付いた。あと、運び屋も捕まえたから、今すぐ来い」
そう誰かに電話をする彼。
その奥に、さっきの男たちが横たわっているのが見えた。
そいつらも気絶しているのかピクリとも動かない。
電話を終えた彼は、兄を男たちと同じように地面に寝かせ、私の方を振り返った。
「おい、テメェはここで何してんだ? 見たところガキだし、コイツらの仲間じゃねぇんだろ?」
威圧的な態度に足がすくむ。
兄やあの男たちを捕まえてるってことは、多分悪い人ではないんだろうけど……それでもやっぱり、怖い。
「何とか言えや」
「っ……あ、兄の後を追って来ただけ、です」
「……兄っつーのは、こいつで間違いねぇな?」
そう言って兄の右足を一蹴り。
合ってるけど、さすがに酷くないか……
「間違いないです」
「ふぅん……テメェの兄が何したかは、分かってんだろうな?」
「……はい、分かってます」
「じゃあこれからどうなるかもわかんだろ」
分かる。
もちろん、分かってる。
悪い事をしたら、警察に捕まる。
当たり前だ。
兄がしたことは、間違いなく悪い事だろう。
実物をちゃんと見たわけじゃないけど、兄のあの慌てよう、この異様な空気。
間違いなく、兄は違法な薬 / 物を運ぶ「運び屋」として働いていたんだ。
「テメェはこいつらとも、ヤクとも関わってねぇんだよな?」
ヤク、というのは、おそらく「薬 / 物」の事だろう。
推理小説や刑事ドラマでたまに出てくるから分かる。
「関わってません……兄についてきたのも、初めてで」
「そうかよ」
白銀の彼は、ぶっきらぼうにそう言って煙草に火をつける。
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おたくちゃん - ゴハァ(吐血)最推し...尊い... (2021年5月7日 21時) (レス) id: 210f23da0b (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまうくらい面白かったです。そして、めっちゃドキドキしました(*´ω`)この物語、大好きです! (2021年1月3日 20時) (レス) id: e7a52269e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月斗。 | 作成日時:2020年12月17日 7時