僕らの存在証明論 (ページ9)

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第8話ページ9

「死神というのは、姿が見えなくてもある程度その霊圧を感知する事で相手が誰で、そこに存在すると認識する事ができる。」

｢まぁお前のようにそれがド下手くそな奴も居るがな｣というルキアの嫌味にうるせぇと一護は小さく返す。

「彼奴を最初に見た時目を疑った。その目で見るまでその存在を認知する事が出来なかったからだ。」

視覚では見えるのに、自分の霊視的な部分で認知できない。

ひどく奇妙な心地だった。

「本当に彼奴がこの世界に存在しているのか疑いたくなる事がたまにある。」

「なんだよそれ……｡」

「わからん、今までにない事だ。」

まるで故意的に誰かが彼奴を世界から隠しているようにも見える。

「今の所被害があるかどうかすら分からん。だが彼奴が異質なのは確かだ。よく見ておけ。」

そのルキアの言葉に「わかった」と一護は短く返す。

一護にとってAは“特別”だった。

小さい頃、幽霊が見えると言う自分を気味悪がず、ずっとそばに居てくれた。

それどころか怖いと怯える自分に手を差し伸べてくれた。

今でも覚えている。

幼い頃夕暮れの帰り道、血まみれの顔の見えない女が道の先で佇んでいた。

いつも自分がいつも見ている霊とは違く、その少し人離れした姿にひどく恐怖を抱いた。

いきなり怯えだした一護に気づいたAは「どうしたの？」と優しく尋ねた。

「あそこに怖いのがいる。」

指を差した方をAは見たが、きっとその時は何も見えていなかったのだろう。

それでもAは怯える自分を無下にすることは絶対にしなかった。

Aは小さく「そっかぁ」というと、まだ小さくまろやかな手で自分の手を握った。

「わたしが連れてってあげる。だから一護は目つぶってて。」

「いーよって言うまで目あけちゃダメよ。」そう言われるがまま、一護は目をつぶりAに手を引かれるままその道を歩いた。

「いーよぉ」

そう言われ目を開けた時にはその通りは抜けていて鮮やかな夕焼けが照らす道へと来ていた。

「ね？怖くなかったでしょ？」

そう言いながら笑うAの笑顔に酷く安堵したのを覚えている。

それから一護にとってAは無条件に心を安らぐ大きな存在となった。

それは今となっても変わらない。

だが成長するに見えてきた自分とAの力の差。

それを見てAは決して自分より強くないのだと悟る。

あの安らぎの場がふとした瞬間に消えてしまう。

そうんな未来があると思うと酷く怖くなった。