僕らの存在証明論 (ページ41)

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第40話ページ41

私は存在感を消し、夜の街をただひたすらに走っていた。

私は元々霊圧が他の人に探知されないらしいから気配さへ消せばどんな人の霊圧探知にも引っかからないと浦原さんが言っていた。

だから真子くんが死神だろうとこうやって手を振り払ってしまえば霧のようにその存在を不確かにする事が出来る。

今更になって負の感情によって抑えられていた恐怖が顔を出し涙が溢れてきた。

私の世界が崩れる音がした。

私の知らない君がいる事がこんなにも怖い事なんて知らなかった。

聞きたいこと、聞かなくちゃいけないことが沢山ある。

けどそれは今じゃない。

掴まれていた手首は今も少しヒリヒリとして痛い。

お前に“特別”はない

真子くんはそう言ったけれどそれは違う。

君が私に重ねている人はそうだったかもしれないけれど、私は違う。

“大事”なのはどっちだと聞かれたからどちらも“大事”だと答えたのだ。

けれど“特別”はどっちだと聞かれたら私は間違いなく真子くんと言える。

それくらい君は私の中で大きな存在だと言うのに、君はそれを自覚していない。

浦原商店が見えてきた。

皆の霊圧がある。

もう私以外は集まっているようだ。

私は涙を拭い浦原商店へ向かう。

「あ〜きたきた！遅いっすよぉAさん！」

相変わらずの気の抜ける声の調子の浦原さんにどこか安堵している自分がいた。

「ごめんなさい、ちょっと色々あって。」

そう俯きながら答える私の頬に浦原さんはそっと手を当てる。

「泣いていたんすか？」

まだ湿っている私の目尻を彼はそっと撫でた。

「大丈夫だよ、ちゃんと行ける。」

「今から行くのは危険なところだ。少し出発を遅らせるので気持ちの整理をしてください。」

そう優しく言う浦原さんに私は首を振る。

朽木ちゃんの命がかかっているんだ、いくらでも早く行きたい。

それでもと食い下がる浦原さんにそれじゃぁ一護を呼んできて欲しいと頼んだ。

「A遅かったな、どうした？」

そう言いながらこちらに来た一護に私は他の皆には見えないところで勢いよく抱き着いた。

どうしたんだよという一護の声を無視して、腕に力を込めて鼻いっぱいに一護の匂いを吸う。

私が何も言わないことを理解した一護は私と同じぐらいの力で私を抱き締めてくれた。

それだけで私の心は少しづつ凪いていく。

この人の背中を護る。

邪念が消えて、それだけが頭浮かぶ。

単純すぎる私の頭に少し感謝をして一護から離れる。

「ありがとう一護、気合い入った。」

そう言って笑うと一護は何も言わず私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。