第38話 ページ39
「な、に…言ってる、の?…」
“人間のお前が踏み入れて良い領域じゃない”
そう言う貴方は一体何?
「生きてる人間が行く場所やない。ましてや今まで大事にしてきたお前をそう易々と行かせるほど俺は心広ないねん。」
今まで目を逸らしてきたもう一つの事実が輪郭を表し始めた。
これは一護とのは違う。
相手の為を思って目を逸らしたものじゃない。
自分が見たくなくて自分の為に目を逸らし続けてきたもの。
それが今私の目の前に大好きな彼の手で突き付けられた。
ねぇ真子くん、なんでそんな言い方をするの?
そんなんだったらまるで、まるで…自分が人間ではないと言っているようなものでは無いか。
「喜助に俺の知らんとこで何を吹き込まれたか知らんが、戻って来ぃ。お前はここで俺とずっと一緒に居ればええねん。」
浦原さんの名前が出て咄嗟に顔を上げる。
相変わらず真子くんの顔は見えない。
でももう浦原さんの名前が出た時点でこれは確定してしまった。
「真子くんは…死神なの?…。」
その私の問いに真子くんは肯定も否定もしなかった。
けれど、出会った頃から何も変わらないその姿が、彼が死神である事を肯定する。
何かが崩れる音がした。
一気に覆い被さる思考の波に溺れそうになる。
彼との生きる時間の違い、生きる世界の違い、全ての違いに覆い尽くされそうになる。
不安と途方もない孤独感に苛まれそうになる。
今握られている手ですら明日あるかすら分からない。
そんな恐怖が身体の内側から這い上がってくる。
けれど、今はそんな恐怖に呑まれている暇は無い。
私は手をギュッと握り全ての不安を心の縁へと押し込める。
そして覚悟を決め顔を上げる。
「真子くん、私の友達が死にそうなんだ。黙って見過ごせない。必ずここに帰ってくるから行かせて欲しい。」
そう言うと私の手首を握る彼の手に力が入った。
「だから諦めろ言ぅてんねん。お前が行っていい場所ちゃう。」
「それでも見過ごせない!!朽木ちゃんは友達だ!!」
「なぁ、俺とそのたかだか出会って数ヶ月の友達どっちが大事なん?」
その言葉に私の思考は一瞬停止した。
「なに、言ってるの?…朽木ちゃんは命がかかってるんだよ?」
「それがなんやねん。可哀想やと思うけど見ず知らずの人に大事なお前を差し出せる程お人好しやないねん俺。」
もう一回聞くでぇ、俺とその朽木ちゃんどっちが大事なん?
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは!いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年11月28日 20時