第37話 ページ38
浦原商店から帰った私達はその日の夜、クラスのいつものメンバーと黒崎家で花火を見に来ていた。
夏休みも始まり、夏も本場となる。
夕暮れた色の空を超えて、夜空に大きな火の花が咲いた。
皆より少し後ろに座り、その大輪の花を眺める後姿を目に焼きつける。
死ぬつもりなんて更々ないが、生きて帰れるという保証は無い。
だから夏が見えるこの記憶に心を残して征こうと思った。
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花火大会も終わり、人々が眠りにつくその時間に私はそっと逆刃刀を持ち立ち上がる。
短パンに黒いパーカーというラフな目立たないかっこをして、走りやすいマラソンシューズを履く。
逆刃刀を刀袋に入れて背中に背負う。
静かに玄関から出て施錠する。
フードを深く被り庭から出ようとしたその時だった。
「こないな時間にどこに行こうとしてんのや。」
聞きなれた声に私は驚いて後ろを振り返る。
「真子くん…こんな時間にどうしたの?」
動揺を隠すように私はいつも通り明るい声で真子くんに声をかける。
「質問を質問で返すなや。今聞いとんの俺やろ。」
いつもとは違う低い声で真子くんは言う。
おかしい、そうだ何かがおかしい。
真子くんは連絡無しに突然押し掛けてくる事はよくあるが、それはいつも私が起きている時だけだった。
ましてやこんな真夜中に来る事など今まで1度もなかった。
真子くんの気配が近づいてくる。
街灯の光でかろうじて姿は見えるが、その表情までは読み取れない。
ただ今纏っている雰囲気がいつもより冷たい事だけはわかった。
「いつからこないな時間に外出する悪い子になったん?」
そう言って真子くんは私の手首を掴んだ。
「家ん中入って早よ寝るで」と行って家に連れ帰ろうとする真子くんに私は待ったをかけた。
「ごめん真子くん!!何をしてるかは言えない…でも!私行かなきゃいけないんだ!!友達が私を待ってる!!」
そう言うと真子くんはピタリと止まり、ゆっくり私の方へと振り向いた。
「その友達っちゅうのは諦め。言ぅたやろ、“知らん事”に首突っ込んだらあかんって。」
そう冷たく言い放つ真子くんに私は惚けたように言う。
「知らない事?ってのは何か知らないけどそんなに首突っ込んだ覚えはないよ。」
「だから行かせて?ね?」と言うと真子くんは重たい溜息を大きく吐いた。
「言い方変えるわ…A、行ったらあかん。人間のお前が踏み入れてええ領域やない。」
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは!いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年11月28日 20時