第35話 ページ36
「怖いんだ...Aが俺の知らない所で傷付いて戻ってこなくなるのが...あの日みたいに。」
いつもの一護からは想像がつかないほどか細く、頼りない声でそう呟いた。
「あの日?」
一護の言うあの日とは一体いつの事だろうか?
一護の知らない所で傷をつけて来た事なんて殆どない。
ましてやこんなにも一護に恐怖を植え付けるほどの大怪我なんてした事はない。
「お前は覚えてねぇもんな...あの日の事は全部無かったことにされた。」
「なんの、こと?」
一護の瞳から目が離せない。
こんなにも瞳が不安定に揺れる一護は初めて見た。
「お前昔、高熱が出て丸二日記憶が無くなった日あっただろ?」
そう聞かれ私は小さく首を縦に振った。
その日は一護が来るのを公園で一人で待っていた。
けれどそれからの記憶がない。
じいちゃんの話によると高熱を出して倒れていたところを一護に見つかり丸二日寝ていたという。
熱なんかより倒れた時に打ったのであろう頭の傷の方が痛かったのをよく覚えている。
「あれは本当は熱なんか出ちゃいなかったんだ...」
「え?...」
一護は私の額をそっと撫でる。
そこはその時に出来た傷があった場所だ。
「あの時は何にも知らなかったし、すぐにじいさんが来てくれたから大事にはならなかった。」
けど俺はあの日、確かにお前に襲いかかる何かを見た。
一護の手が小刻みに震え出す。
「じいさんにはAに何も言うなって言われたんだ。いつか時が来たら、自分で思い出して対処する日が来るからそれまでは思い出させるなって...。」
「じいちゃんが...?」
私の知らないところで、何かが蠢いている。
色んな真実を知り、全体が見えなくなってくる。
じいちゃんは一体何を知っていたの?
「なぁA、俺はもうあんなお前の姿を見たくねぇんだ。」
そう言われ意識が一護に戻る。
「俺の知らない所でお前が傷つくのが怖い。」
顔を顰めて酷く辛そうに一護は言う。
私が覚えいないそれは、幼い一護にとって酷いトラウマになってしまったんだ。
私は思わず膝立ちになり一護の事を頭から抱き締めた。
「ありがとう一護、今まで護ってくれて辛かったよね。酷い事言ってごめん。」
一護の逞しい腕が弱々しく私の腰に回る。
「じいちゃんが何を知ってるか分かんないけど、じいちゃんが言ってた“時が来たら”って多分今なんだよ。」
だからもう大丈夫だよ。
「私は強くなった。もう簡単に壊れたりなんかしない。」
そう言って私はもう一度一護の頭をギュッと抱き締めた。
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは!いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年11月28日 20時