第30話 ページ31
ガヤガヤと色んな声が飛び交い、食卓を囲む。
ご飯を食べながらしょうもない事で笑って、話をする。
こんなにも賑やかな食卓はいつぶりだろうか。
じいちゃんがいなくなってから必然と1人でご飯を食べる事が多くなった。
真子くんが来てくれるから毎日寂しいと思う事は無いけれど、やはり孤独を感じざるおえない時がある。
けれど最近は学校帰りは浦原商店により、真子くんが来る日は早めに帰り、来ない日はそのまま晩御飯をもらったり、泊まったりしている。
一人になる時間が極端に減り、暖かい食卓に包まれる事が多くなった。
それがどれだけ幸せな事か。
私はご飯を噛むのと同時にその幸せを噛み締めながら味わう。
真子くんと一護だけで作られていた私の世界に、新しく“浦原商店”というのが増えた。
恐れていた変化だったはずなのに、今は新しい温もりが心地よくて仕方がない。
ご飯も食べ終わり、ジン太と雨と一緒に皿洗いをし、お風呂に入る。
今日は真子くんが来ない日だからお泊まりをする。
季節はすっかり春が終わり、夏の匂いが頬を撫でる。
縁側に体育座りをしてそれを肌で感じていた。
「Aさん麦茶持ってきたんで、一緒に飲みませんか?」
いつの間に来ていたのか、浦原さんは私に麦茶の入ったコップを渡し、腰を下ろした。
特に話すことも無く、心地のいい静寂の時間が流れる。
夏風が私達の間を通り抜けていく。
あぁ夏が始まったなぁと思いながら私はおもむろに左足に着いている足飾りに触れる。
これは金属でできているから夏は触ると冷たくて気持ちいいからこうしてよく触る事がある。
そうやっていつも通り足飾りを撫でていると突然足飾りを触っていた手を浦原さんに掴まれる。
どうしたのかと思い隣を見ると、帽子をかぶっているせいで表情は分からないが足飾りを凝視しているのが分かった。
「この足飾りいつから付けてましたか?」
浦原さんはやけに静かな声で私にそう問いかける。
「物心着く前からだから、正確には覚えてないなぁ。これ外すとめっちゃじいちゃんが怒ったから外さないでいたら、足が成長しちゃって外れなくなったんだよねぇ。」
「なるほど」と呟くと少し考えるように浦原さんは静かになった。
「何?これがどうしたの?」
「いやぁ随分と趣味の悪い物をつけてるなぁっと思いまして」
あっけらかんと放たれた言葉に私は少し焦る。
「え!?この足飾りダサい!?」
「はい!それはもういつの時代だってくらいダサいっすね!」
そう言われ私は頭を抱える。
これはもう外す事ができないというのにダサいなど言われたら凹むじゃないか。
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは!いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年11月28日 20時