第29話 ページ30
「どうした!!もっと足に力を入れんか!!“神速の抜刀術”が聞いて呆れる!!」
「はい!!」
だだっ広い空間の中、私は雨のように降ってくる攻撃を逆刃刀を使って受け流す。
スピードはどんどん上がっていく。
それに着いていくため私も足により力を入れる。
これが浦原さんの言っていた“無意識”を“意識”に変える方法。
実践戦闘を行い、身体の使い方、速度の上げ方を“今の私”が意識して行う。
そうする事によって私という自我を確立させるという方法だ。
最初はいくら逆刃刀だといっても、人に刀を向けるのは憚られたが、初手から地面に大きなクレーターを作られたのでやんなきゃ殺られることを理解した。
今では大分自分で身体を使えるようになったし、速度も上がってきた。
ご先祖さまにはとても悪いのだが今の状況が私は…
(た、楽しいー!!!!!!)
じいちゃんがいなくなってから模擬試合や練習試合などする相手がいなくなり、いつも一人道場の中で剣を振るっていた。
だが、今は実践に限りなく近い状況。
放った攻撃は止められ、立てた防御は隙をつかれる。
絶え間ない攻撃の中、ひたすら相手の動きを予測する。
予測して予測して予測して……相手の動きに追いついていく。
それがこんなに楽しいなんて思いもしなかった。
相手の攻撃を躱し相手の懐の下に入る、右手で刃を持ち下から飛び上がりつつ鞘の先端で相手の鳩尾を狙う。
しかしそれも綺麗に躱され、気付けば背後で腕を捕まれそのまま押し倒されていた。
「今のは少し冷っとしたぞ、いい攻撃だった。」
「いててて…、夜一さんにはまだまだ敵わないなぁ。」
「当たり前じゃ」と言いながら夜一さんは私の上から退き、私を立ち上がらせる。
「いやぁお見事お見事!!期待以上っす!!」
そう言って扇子で顔を扇ぎながら浦原さんが降りてきた。
「ご飯の準備出来たのでそろそろおわりにしませんか?」
もうそんなに時間が経ったのかと少し驚く。
まぁ楽しくて夢中になっていたのもあるし、何よりこのだだっ広い“勉強部屋”と呼ばれるこの地下の空間は時間の流れが分かりにくい。
梯を登りながら人知れずため息を零す。
ここに初めて来た時は今世紀最大に驚いたと思う。
あんな小さな駄菓子屋の地下にこんな巨大な空間があるなんて誰が思うだろう。
いや嘘だ、今世紀最大に驚いたのはなんとも不思議な喋る猫が、なんともエキゾチックな美しいお姉様になった事だ。
あの時は驚きすぎて声も出なかった。
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは!いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年11月28日 20時