僕らの存在証明論 (ページ29)

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第28話ページ29

退屈な授業を終えるチャイムがなり、教室は騒がしくなる。

次の授業の教科書を早々と持ってきた私は自分の席につき窓の外を呆然と眺める。

教室の中は昨日の謎の事故による被害の話で持ち切りだ。

学校も体育館に近い校舎は硝子が全部割れていたらしい。

それが全て虚のせいだと知っている私はその話題に入るのはなんだか憚られた。

青い空の中ただ過ぎ行く雲を見つめる。

頭の中ではずっと昨日の夢で見たあの歌が響いている。

けれど前のような不快感はけしてなく、逆になんだか心地良い気さえする。

「城の南で戦ってぇとりでの北で死んだのさぁ」

野垂れ死にして、そのまんま後は烏が喰らうだけ

初めて歌った歌なのになぜか凄くしっくりくる。

自然に口角が上がり、楽しいとさえ思えてしまう。

「がっつく前にひとしきりぃもてなすつもりで泣けよってぇ」

小さな声で呟くように歌う私の頭上に大きな影が落ちる。

「おい、何一人でニヤニヤしながら歌ってんだよ……キモイぞ」

そう言って一護は少し引いたような目で私を見ながら前の空いてる席に座る。

「失礼だな、私だって歌の一つや二つ歌うよ。あと女子に向かってキモイは聞き捨てならん。」

成敗!!と言って私は一護の頭にチョップをかます。

それをいつも通り一護は難なく受け止めた。

「歌うにしたってなぁ、もっと別な歌あんだろ。なんだよその物騒な歌詞。」

まぁ確かに言われてみればそうかと思って私は一護にとられた手を戻す。

私にはあの夢の記憶があるから凄く楽しい歌に聞こえるけど、他から見れば酷く物騒な歌を笑いながら歌ってるように見えるのか。

「……外で歌うのはよそう。」

「そもそもどこで覚えてきたあんな歌。」

「なんだ知らないのか黒崎。」

隣から声がして振り返ってみると、そこには包帯を巻いた石田くんがいた。

「あ？お前知ってんか石田？」と普通に返す一護。

昨日あんなに敵意剥き出しだったのに一体何があったんだ。

「“戦城南”という中国の古い漢詩さ。戦いを疎い書かれたと言われているが書き手は不明。こんな詩を歌っている人は初めて見たよ。」

「流石学年一位、よく知ってるね。」

たまたまだよと言って石田くんは眼鏡をおさえる。

「それにしたってなんでそんなのお前が知ってんだよ」

そう言って一護は私を見るがなんとも言えなのでただ唸ることしか出来ない。

授業始まりのチャイムがなり、この話は中断となった。