僕らの存在証明論 (ページ28)

今日:53 hit、昨日:39 hit、合計:14,125 hit

第27話ページ28

「そういえば真子くん、今日家に来る日じゃなかったよね？もぉ前も言ったじゃん来る日は連絡してって。」

食材真子くんの分あるかなぁと私が呟くと「どーせ連絡しても行倒れてた誰かさんは見れへんかったやろ」と言われる。

「今日、街で色々事故があったらしくてな、Aの事が心配で心配でいっそいで色々終わらせてきたちゅーのに…当の本人は玄関で行き倒れてるし。」

そう言って真子くんは私を抱き締めたまま下から睨み上げる。

いつも真子くんは戯けて飄々としているけど、私のために必死になってくれるというのは凄く伝わる。

今日だって本当に私の事が心配で、駆け付けてくれたのだろう。

それが嬉しくて、私はまだ1人じゃないという事が実感出来て、それを感じさせてくれた真子くんが愛おしくて、真子くんの顔を自分の胸に埋めるように抱き締める。

「真子くんありがとう。真子くんのおかげで私全然寂しくないし、怖いものなんてないよ。」

そう言って私は真子くんの頭に頬を擦り寄せる。

真子くんと私には血の繋がりなんてない。

けれど心の底から愛おしいと思える大切な家族だ。

「俺はホンマに怖かったんやで」と真子くんは私を抱き締める力を強くする。

そう言われ心配で来てくれた真子くんに対して少し悪い事をしたと思った。

「ごめんね、本当になんだか凄く疲れてて、凄く眠かったの。」

「せやからって玄関で寝ることないやろ。玄関の鍵も開いてたし、扉開けたの俺やなかったらどないするつもりやったん？」

ほんま不用心にも程があるでという真子くんにまたごめんごめんと謝り、その美しい髪を撫でる。

「なぁ、今日どこ行ってたん？」

その言葉に撫でていた手を一瞬止め、またその髪を撫でながら「学校に行ってたよ？」と嘘でも無いし、本当でもないことを言う。

「絶対危ない事したらあかんよ。“知らん事”にも首突っ込んだらあかん。」

真子くんの言う“知らん事”とは一体何なのか私には分からない。

私は今日自分の知らない事を沢山知った。

知らない世界を見た。

きっともうこれは足を踏み入れてしまった事になるし、もう知らなかった時には戻れない。

私はまた真子くんの頭を抱えるように抱き締める。

「大丈夫、私は必ずここに帰ってくるから。」

そう例え自分が何者で、何を忘れていようとも、私の事を変わらず愛してくれる人がいるのならきっと私は見失わない。

これが私が今出来る存在証明だ。