第21話 ページ22
はぁはぁと私は肩で大きく息をする。
今更になって身体の怠惰感と、命を脅かされていたという恐怖が一緒に襲ってくる。
私は後ろを振り返り、先程私が斬った化物を見る。
ついさっきまでは見る事すら叶わなかった異形の物。
その大きさは人間よりは遥かに大きく、顔らしき場所には白い仮面のような物を付けている。
そしてまるで心が無いことを比喩するかのように、その胸にはポッカリと穴が空いている。
程なくしてその異形の化け物は、体が薄くなりまるで塵が空へ舞うように形を無くしてしまった。
“生き物を斬った”
その事実が私の肩に重くのしかかり手が震え、逆刃刀が手から滑り落ちる。
胃がひっくり返りそうな吐き気と目眩に襲われる。
私は今、異形の化け物といえ“生き物を斬った”。
私のご先祖さまがもう決して人を斬らないと誓いを立て､戒めとして持っていたこの刀で。
本来ならば自分に向いているであろう刃を、なんの躊躇なく握り変え相手に向けた。
自分の知らない自分自身の残虐性に心の底から恐怖した。
(私はこの剣を握ってはいけない)
頭の中でその言葉が反響する。
＿＿思い出してはいけない＿＿
その言葉は私のこの性質の事を言っていたのだろうか？
私が生き物を斬ることになんの感情がなくなってしまう事を言っていたのか。
だから思い出したら戻れなくなると言ったのか？
ならばこれからも私は人を護る為ではなく、人を斬る為に刀を握る人間になるのか？
なんの信念も、大義も、感情もないご先祖さまが忌み嫌った人斬りに。
それを私は忘れていたのか？
体が思い出してしまった生き物の斬り方。
もう戻れないというのならば、今感じている自分が自分でなくなってしまうという恐怖さえ感じなくなるのだろうか。
ならばそれこそもうただの化け物では無いか。
先程斬ってしまった異形の化け物を思い出す。
大事なものが抜き取られたかのように空いた胸の穴。
まるでこれから自分がそうなっていくことを表しているようだった。
先程までの酷い頭痛とノイズが消えたと言うのに、このむせ返る吐き気と目眩の方が何十倍も私の気分を悪くした。
自分が自分でなくなるかもしれないという恐怖。
それが体の深い場所から一気に込み上げてきて私は咄嗟に逆刃刀の刃を自分の首にあて力を入れようとした。
だが次の瞬間、逆刃刀は強い力で引き抜かれそれは叶わなかった。
「ふー危ない危ない。貴女の様な人がこんな死に方したらいけないでしょうに。」
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは！いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか？これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (
レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななな | 作成日時：2023年11月28日 20時
