僕らの存在証明論 (ページ11)

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第10話ページ11

「ただいまぁ」

帰ってくるはずもないのに癖になってしまってついつい家に入ると言ってしまう。

今日は値引きになっているものが沢山あり結構な量を買いすぎてしまったのでかなり重かった。

本当なら一護が運んでくれていたはずなのにと愚痴りながら買い物袋を玄関に置く。

最近急に居なくなることが本当に多い。

何してんだろうとは思うけど、敢えて聞かないようにしている。

私と一護の仲だ。

言わないのにはきっと理由があるはずだし、一護なりの考えもある筈だ。

なら話してくれるまで信頼して待つしかないだろう。

何かと要らないことまで背負おうとする質だ。

変な事で気負わせたくない。

そう思いながらもう一度食材を持ち上げると玄関に見知った靴がある事に気付く。

私は靴を脱ぎその靴の主がいるであろう茶の間のドアを開ける。

そこには自分の家の様に座布団に座りながらテレビを見ている馴染みの顔がいた。

「なんや帰ったんならただいまぁ言えや。帰っとんのわからんやろ。」

「いや、ちゃんと言ったし。テレビ見てるから聞こえなかったんじゃないの真子くん。」

「声が小さくて聞こえませぇーん」と舌を出して煽ってくる彼の頭を小さく叩く。

「それに来る時連絡してって言ってるじゃん!!今日たまたま多く食材買ってたから良かったものの、作るこっちは大変なんだから!!」

「前も買いすぎてたやないかい。どーせまだ一人分買うの慣れてへんのやろ？逆に俺が今日来てラッキーやないかい。」

「そういう事じゃない！」

そう怒る私の頭を真子くんは､はいはいと言いながら撫でた後、私が持っていた重たい食材達を私の手から奪い台所へと持っていく。

本当に気が利くのか利かないのか分からない人だ。

真子くんとの仲は幼なじみである一護とたつきの次に長い。

小さい頃、路上で青白い顔をして倒れている真子くんを私が家に連れてきてじいちゃんと介抱した時からはじまった。

そこから恩返しと称して交流は盛んになったし、元気になった後もこうして一週間に一回は泊まりに来ている。

そしてじいちゃんがいなくなってからその頻度が増えた。

今回のように突然押しかけては泊まっていくこともしばしばある。

真子くんは一護と同様に私に対して非常に過保護だ。

なんなら一護より酷いかもしれない。

だからこうして一人に住むには広い家で生きている私を心配して見に来てくれているんだ。