第1話 ページ2
日が登り始め、朝日が辺りを明るく照らし始める早朝。
その眩しいくらいの朝日を浴びながら、透き通った朝の空気を斬るように刀を振るう。
小さい頃からやっている朝の日課。
私はこの時間が一日の中で一番好きだ。
燃えるような太陽が生まれて来る様を眺めるのも、
朝日に照らされ草露が宝石のように輝くのも、
何に濁りのない澄み渡った空気も、
何もかも美しくて好きだ。
そんな世界が目覚め始めた時間帯に大好きな刀を振るうのは至福のときと言っても過言では無い。
小さな道場に響くのは私の足音と空気を切り裂く音だけ。
これが私の世界だ。
じいちゃんに教わった事を思い出しながら体を動かす。
一応家は道場なため、少ないが昔はそれなりに門下生はいた。
じいちゃんを師範代として神谷活心流という人を護る剣を教えていたが、じいちゃんが他界してしまいこの道場は解散となってしまった。
だから今は私が一人この道場で刀を振るっている。
じいちゃんから教わった剣は二つ。
人を活かす剣である「活人剣」を理念としている“神谷活心流”
そしてもう一つは「神速の殺人剣」と呼ばれる“飛天御剣流”
じいちゃん曰く、私のご先祖さまはかつて幕末の時代に名を馳せた人斬りだったそうで、
人を斬ることを憂いだご先祖さまは神谷活心流の師範代であった娘と結婚し、飛天御剣流を封印しようとしたが、
自分の家族を護るために剣を振るった所をたまたま2番目の子供に見られてしまったらしい。
その子供は剣の才能を受け継いでしまったらしく、一目見てその神速の剣技に惚れ込み、完全コピーをやってのけてしまったらしい。
ご先祖さまは良しとしなかったらしいが、何故かうちの家系で誰か一人はよっぽどの剣好きが生まれてしまい、
その人達のおかげで代々家の家系で細々と受け継がれているらしいのだ。
私もじいちゃんもその“剣好き”として生まれてしまい、生まれてこの方、人生の大半を剣を握って生きてきた。
再三言うがご先祖さまは良しとしなかったらしい。
けれど剣好きの子孫から言わせてもらえば、次男坊グッチョブである。
ピピピピとアラームが道場に響きわたり、私は足を止める。
もう私の至福のときは終わってしまったらしい。
タオルで汗を拭き、礼をしてから道場を出る。
今日は月曜日。
普通に学校に行かなければならない。
さぁここからは時間との勝負。
私はグッと伸びをひとつして家に入った。
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは!いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年11月28日 20時