あなたの残した陽だまり ページ39
いかないでくれと言えば何かが変わっただろうか?
貴方が好きだと言えば何かが変わっただろうか?
大切な物は失ってから気づくなんて
この数年で大切な物が増えすぎた私にはそれを知るにはまだ早かった。
冷たいこの手を暖め続けた貴方こそどれほど寒かっただろう。
そんな事今じゃ知る由もない。
歯車が音を立てて動き出す。
墨汁を零したような夜だった。
最近流魂街で魂魄が消滅するという事件が増えて
九番隊の六車隊長も白さんも出たけど戻ってこなかった。
先に行ったひよ里ちゃんも戻ってこなくて
だから特務部隊に隊長が任命された。
「平子隊長!!」
一番隊隊舎から出てきた隊長を呼び止める。
「A!?なんでお前がこないなところおんのや!」
隊長が驚いた顔で言う。
「隊長!私も行かせてください!」
「あかん、お前にどうこうできる案件やない。」
「それでも凄く嫌な予感がするんです...力不足なのはわかってます...だけど行かせてください!」
「力不足やってわかってるならええ子で待ってろ。」
静かな声で隊長に宥められる。
でも本当に嫌な予感がするんだ。
霊圧探知が人より敏感な私にはわかる。
なにかおぞましいものが渦を巻いている。
「力不足だけど役には立ちます!私には痛覚が人よりありません!!どんなに傷つけられても簡単な事では気絶しないし、私は回道も使える!私の斬魄刀の能力なら「A!!」」
隊長の声にビクッと身体が震える。
隊長の顔は怒っているような悲しんでるようなそんな複雑な顔をしていた。
「自分の事そない道具みたいに言う奴は連れてけへん。」
「でも!隊長にもしもの事があったら!!」
「アホか。お前がそれぐらい俺の事を思ってくれてるぐらい俺もお前のこと大事に思ってんのや。連れていったらお前が要らんところで傷つく。それが目に見えてんのに連れてけるわけないやろ。」
「でも...」
隊長は優しく私の冷たい手を握る。
「必ず帰って来る。だからええ子で待ってて。な?」
そう言って隊長は私から手を離す。
温もりが体温が私から離れていく。
墨汁を零したような夜。
遠く過ぎ去っていく貴方のその金色に私は何も言えなかった。
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屍乃(プロフ) - 初めまして、屍乃(しの)と申します。傘村トータ様の楽曲、平子真子という推しの話という事で読まさせていただいてます。全体的にすごく好きです。ななな様の作品がこれからも増えるのを楽しみにしてます。応援してます。 (2023年1月23日 22時) (レス) @page41 id: f0eb019efd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年1月2日 23時