二十三 ページ24
「梅ちゃんがあそこまで執着する理由が分からないんですよ」
「それを俺に話してもなんもならんやろ」
傘を直しに来たついでに悩みを話してきたこの男はしゅんとした表情で俺に話してくる。
だが、腰には刀を下げ綺麗な袴を着ている段階でその顔は似合わない。
幼い頃から見てる彼女をそんなに守りたいんだなと思いながら傘にのりを塗る。
「そういえばAは幼い頃にここに来たんだろ？」
「そうですよ。確か聞いた話では山の中の方で親は殺されたとか」
？は？？
手を止め西山を見ると彼はまた悲しそうだった。
「賊にやられたと」
「それAは知ってんのか？」
「いいえ。
本人その時の記憶が無いんです。以前の記憶を無くしてしまっていて」
「じゃあなんでそれを本人に伝えないんだ」
「…背負うには。女性が1人で背負うには荷が重いと思いまして」
優しく微笑むのは彼の優しさなのだろうと津田は感じた。
西山は彼女に人並みの幸せを望み
梅原はまた違う気持ちがある。
じゃあ俺は？
誰かがAの横にいるのを想像すると胸くそ悪い気持ちになる。
苦しいという言葉が似合う。
傘に和紙を貼りながら思った。
「…彼女は皆から愛されてるな」
「そうですね。
愛されてますね」
俺は彼女のことを好いているのかもしれないと。
紅の色を整える為調合しているとそこに珍しい奴が来た。
「お客かと思ったら君か」
「悪いのか？」
「いいや。どうした」
「…細谷さんはどうして紅師に？」
「んー？憧れ。自分の師匠を見た時にこの人の弟子になりたいと思って弟子入りしたかな」
綺麗な赤を紅に混ぜる。
薄い紅や濃い紅
同じものは二度とできない。
それを作る時のこの爽快感のようなぞくぞくする気持ちはずっと忘れないのだろう。
目の前にいる梅原は細谷が紅を混ぜる姿を見てただ
黙って立っていた。
「…そこに座りなよ」
「…俺、家を出て仕立て屋になったんです」
珍しく来た彼の初めて聞く話に紅の調合をやめ彼と向き合うことにした。
「両親は何を？」
「…少しここから離れた山の所で武士の家系でした。
その家で男として生まれは俺は武士として生きることを約束されてました」
西山とは違うまた難しい家であると思えた。
黙って聞いていると梅原は
「Aを見た時初めてではないと思えたんです」
「…んん？」
優しい笑顔を浮かべてそう呟いた。
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綉 - おはようございます。これって読んで行かないと誰が出て来るとかってって分からないんでしょうかね？ (3月15日 7時) (
レス) id: 6d33361b7d (このIDを非表示/違反報告)
井戸 - うわぁあああ！！ はる春さんだぁあ！！この話大好きです！ (2019年7月13日 7時) (レス) id: 1e21205b19 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅり(プロフ) - ハル春さんの作品大好きです！更新楽しみにしてます。 (2018年8月8日 23時) (レス) id: 229459fcea (このIDを非表示/違反報告)
ゆかこ - この続きが気になります！！ (2018年8月3日 23時) (レス) id: 8ead2b98e6 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - いえいえ！毎日の日課にします！ (2018年3月7日 22時) (レス) id: 3c862a1cac (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2018年2月27日 0時
