【薄桜鬼】何か求められても困りますが (ページ3)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:619 hit

3 ページ3

「……！！！……いあん……！！！
おい！あんた！！！！！」

「はっ！！！！」

「気がついたかい？！
……それにしても……はっ、なんて
随分とわざとらしい起き方の子だね」

「？！……？！？！」

がばりと慌てて身体を起こす。
残念ながら前世の記憶はあるらしい。
ついさっきまでの記憶も、
バッチリ脳みそに刻まれている。

目の前にいたのは
ほっかむりを被ったおばあさんだった。
笑うと目じりにシワのよる、
人の良さそうなタレ目のおばあさん。

「最近は暑いからねぇ。
……体調が悪いのに無理したらダメよ」

「……あ、あの。
ここは、その、どこでしょう……」

暑い、と言われても、
日本の夏に比べれば幾分涼しい気がする。
でもどう考えても日本語だし、
服装のそれも昔の日本といった感じで……

「……あの。失礼ですが今は何年でしょう？」

「……あんた本当に大丈夫かい？
暑さで頭がどうかしちまったんでねぇの。
……うちへおいで、
濡れた手ぬぐい位は出せるからね」

ぐい、と思ったより力強く引っ張られ、
地面から腰が浮いた。
いつまでも
引っ張られている訳には行かない
と私は慌てて腰を起こす。

おばあさんは私が起きても手を離さず、
幼子にするように私の手を引いて
家であろう場所へ私を引いて行った。

「綺麗じゃなくて悪いねぇ」

「い、いえ！お邪魔します」

ほら、お茶。
そう言って出されたのは
急須で淹れられたお茶だった。
正直お茶の味は分からないし、
粗茶で悪いねぇと言われても充分美味しい。

「正気に戻ってきたかい？
……最近はねぇ。
開国だなんだととつくにの物が入ってくるし、
日本もこの辺りには物も届かなくなってね。
横浜だかを開港したせいで、
どうやらそこばかりに物が集まるってんでねぇ。
……全く困ったものだよ」

「あ、あぁ、そ、そうですね……」

耳を疑った。
いや、実は何となく予想は着いていた。
このおばあさんの格好とか。
辺りの田園風景とか。
……転生って言ったら普通、
未来に行くものなのかと思ってたなぁ。
ま、心身成熟した人間のまま
転生してるんだから、色々勝手が違うのかもね。

それにしても開国ときた。
横浜が開港したってことは、
日米修好通商条約のあとってこと。
確か横浜港は貿易額の大半を占めてて、
日本で売るより海外にって流れで、
内地の方は
随分と品薄状態に陥ったと習った気がする。
それに金銀の交換比率が違ったりして、
一時期本当に不況だったとか。