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「それは、いつも調査兵団に資金援助をしてくれる理由と何か関係があるのか…?」
「…私は、あなた方のお役に立ちたい。少しでも。けれど、私が出来る事は、精々資金を援助するくらいです。しかも、それは私が自分で働いて稼いだお金ではない。私は、自分の力では何も出来ないんです。…ごめんなさい。」
「お前が謝ることではない…実際、俺たちは助けられている。」
Aは悲しげに微笑むと、
直ぐに俯いて続けた。
「…私は、兵士になりたかった。巨人についての知識も、兵団についての知識も全く無いのに、簡単にこんな事を言うのは失礼かもしれない。でも、調査兵になって、人類の役に立ちたかった。親と縁を切れば、なれたかもしれないです。ですが、私にはそのような覚悟はありませんでした。私は…弱い人間です。何も捨てられない。結局、この現状を手放す勇気なんてないんです。」
「A…」
「…兵士が駄目ならと思って、医者になろうと志したこともありました。兵士の皆さんを助けたいと。沢山勉強しました。だけど、それも叶わなかった。許してもらえませんでした。」
Aは自分自身を落ち着かせるように
深呼吸をひとつした。
「私は、クレア家にとって、ただのお人形なんです。小綺麗に着飾って、静かに座っていればそれでいい。私に、面倒事は起こして欲しくないんです。それが例え私の望んだ事だとしても。彼らは、私の事を愛している訳じゃない。その家系を、地位を、愛しているだけ。」
Aの瞳から滴が溢れた。
それは、Aが初めて俺に見せた涙だった。
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作者名:絹 | 作成日時:2021年2月6日 18時