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ただの友達でいいから ページ20

最後に、してよ



私が零した言葉に一度は首を横に振った黎くんだったけど、

彼が背負ったギターケースの持ち手を掴んだまま離さないそれに痺れを切らしたのか、
小さく息を漏らした黎くんが苛立ったように、少しだけ乱暴に、わたしの手を引いた。




私は、彼の目に、めんどくさい女として映っているんだろうか。

もしそうなら、最後くらい、彼が一生忘れられない程めんどくさい女でいてやるなんて、思ったのに、






結局一番安い部屋を選んだのは私自身で、


「っ、れいくん、」



ぐちゃぐちゃになるまで、立ち直れなくなるまで、ボロボロに、くしゃくしゃに、してくれればいいのに、

私に触れる黎くんの体温の低い身体は、酷く優しくて、今まで一番優しくて、





なにこれ、結局忘れられないじゃん。




「も、やだっ」



「…Aちゃんは、かわいいね」



お決まりのセリフを吐き出す彼の表情は、イマイチなにを考えてるのか分からないけど、

溢れた涙を追いかけて触れる唇とか、シーツに縫い付けられた手に絡む骨張った指とか、


全部に勘違いしてしまいそうなくらい、甘くてやさしくて、




「ずるいよ、っ」



「ご、めん」



わたしの漏れる声をかき消すように、何度も触れる唇。


あの子にも同じことしてるんだって考えたら、しんどくて苦しくて、死にたくなった。



いっそ、このまま、黎くんの腕のなかで死ねたら幸せなのに、って




「ごめんね、」


もうむりって、意識を飛ばす寸前。

聞こえたのはやっぱり、黎くんが吐き出す、その言葉。



低く紡がれた声に鼓膜が揺れて、わざと彼の背中に立てた爪。


歪む視界には、泣きそうな顔をした黎くんが映るから、




「も、わがまま、いわないから…ただの友達、でいいから」



「…やっぱり、Aちゃんは可愛いね」



だから、会わないなんていわないで。



意識を手放す瞬間、思わず伸ばした手は、しっかり黎くんに握られて、

唇に降ってくるやさしいそれに、そっと目を閉じた。

明日から友達→←会わない会えない



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ぴぴ - 1番好きなお話です、完結待っています (2023年2月9日 23時) (レス) id: d9098e31de (このIDを非表示/違反報告)
なな - とても面白いので完結させていただきたいです (2022年6月15日 21時) (レス) @page39 id: 15d12ffd06 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 0さん» 飛んできていただけたなんて(; ;)まだ更新を待ってくださっている読者様がいると思うととても心強いです!!ありがとうございます(; ;)最後まで頑張りますのでどうぞお付き合い下さると嬉しいです!! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - ゆゆさん» だいぶ登場人物が増えました…。作者も完全に終わりを見失っておりますが、まだ読んでくださっているようでしたらどうぞ最後までお付き合い下さると幸いです(; ;) (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 華子さん» だいぶ前のコメントに今更お返事ですみません。嬉しいお言葉ありがとうございます(; ;)まだ読んでくださっているようでしたら最後まで頑張りますのでどうか暖かく見守っていただければと思います! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アオ | 作成日時:2020年11月18日 16時

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