【TOKAI】無敵【YUYAMI】

5 ページ7

愛知県に向かって車を走らせること2時間。

千葉とにっちは寝ていて、俺は編集をしていた。Aはずっとともやんの話し相手をしている。

「車乗ってる時って誰かと話してないとめちゃくちゃさみしくなるじゃん」と以前Aが言っていたのを思い出す。あの時はさも自分がさみしいから話しかけてるんだというように言っていたけど、Aなりの気遣いだろうな。運転してると、特に高速とかは暇だもんな。


…こういう気遣いを、自然とできるところにAの魅力がある。わざとらしくないのだ。見返りを決して求めず、やりたい事をやっているんだっていうスタンスで接してくれるからこちらも居心地がいい。





「それでね、そしたらてっちゃんが東京くるって言い出して」

「相変わらずだな〜あの人」

「なーんか過保護なんだよねえ」

「まあ〜みんなお前が可愛いんだよ」

「あっ褒めましたね！チョコあげちゃう！」

「大阪のババアかよ」






…2人の会話が気になって全く集中できない。可愛いとか言っちゃうともやんすげえし、チョコあげるとかいう発想のAは可愛いし、ていうかその会話羨ましいし、俺はAのことをめちゃくちゃ気に入っているんだなと改めて思う。



「あっこやさん、起きてる？」

「あ、うん」





くるりとこちらを向いて、俺の名前を呼ぶA。突然のことに驚いて、素っ気ない返事しかできなかった。





「なんもないけど呼んだ」

「なんやねん」

「気分転換に面白い話してよ」

「面白い話しろって言う女マジで無理」

「知ってる〜」





2人とも寝ちゃったね、と鳴海が言うので千葉とにっちを見やる。千葉なんか大口開けてアホみたいな顔をして寝ている。


「あっち着いたらなにする？」

「てつやくんが撮りたい動画あるって」

「えっそれ私出れるやつ？」

「Aはなんか審査員とか言ってた」

「ヤッタ〜〜」




ふふ、と笑って、それからAは俺にもチョコをくれた。なんで？と聞くと、嬉しかったからなんて意味の分からないことを言う。



「編集がんばって、あっちでいっぱい遊ぼうね」

「サンキュ」


Aのその一言で、ともやんとAの関係にやきもきしている自分がぱっと消えた。編集頑張って、あっちでめちゃくちゃ楽しもっと。





もしかして、俺が集中できてなかったこともお見通し？だとしたらA、お前は最強の女だよ。

6（To side）→←4（Ｋ side）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す