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ガチャリ((
私にしては少々乱暴に会議室の扉を閉める。
伊東倉元という男は気配り上手聞き上手、当たり障りのない笑顔と裏表のない性格。
もっと言えば繊細で情けなくて中途半端に優しくて、大胆な事はまったくできない男だと、そう思っていたのに。
いつの間に化け狐らしくなってしまったのかしらと、重たい足を持ち上げると。
「「……………」」
あるはずのない壁…もとい、いるはずのない人影に行く先を遮られ、予定外に動きを止める。
「…宇井特等。お疲れ様です」
「お疲れ様です。涼宮上等捜査官殿?」
…丁寧な言葉遣いには不似合いな、物凄い圧を感じます。
ええ、それはもう、ビンビンに。
「はい、涼宮です。予定があるので失礼致します」
にっこり。
上出来な笑顔を貼り付けて、出来うる限り穏便に、更にはこれ以上関わることなく素通りしようと試みたのだけれど。
ダァンッッッ((
「「………………」」
「あの、」
「なに?」
「いえ…」
笑顔が、黒い。
極めてとてつもなくこの上ないほどに、黒いわ。
挨拶を交わして通り過ぎようとした私の顔のほんの数センチ先には、宇井特等の腕が置かれていた。
先程の破壊音は、彼のこの細腕から伸びた拳が喰種対策局の頑丈な壁に叩きつけられた音。
昔から思っていたけれど、見た目と口調からは想像もつかないほど物騒な御人だわ。
意志が強くて自分がこうと決めたことは何があっても貫き通します!みたいな生真面目ぶりは、私とは対照的で気が合うわけがないもの。
一体私がこのお方に何をしたと言うのかしら。
嗚呼、思い当たる節がありすぎて何も思いつかないわ。
「A上等は、これからお昼休みかな?」
「えぇ、まあ…」
“そうです。”とも、“いいえ違います。”とも答えたくない質問ね。
けれどジリジリと顔を寄せてくる女顔の美青年は、このまま大人しく私を帰してはくれなそうだ。
「じゃあ、少し顔貸してくれる? …行こっか。」
「………。」
とっても爽やかな笑顔だというのに。
その端正な御顔には拒否権はありませんよ、と書いてある。
彼の真意がわからないものだから、言い訳や弁解を先に考えようにも手の打ちようがない。
そこまで計算して私の事を取り扱っているのだとしたら、彼はとっても腹黒い男だと、これからの私は思うと思うの。
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ちぱるん(プロフ) - 旧多くん好きなのでこう言う作品が読めて嬉しいです!更新頑張ってください! (2018年5月21日 0時) (レス) id: beb8c0ac9c (このIDを非表示/違反報告)
氷麗(プロフ) - nekosugiさん» コメありがとうございます! わかりみです.。存在えろいですよね…← (2018年4月24日 0時) (レス) id: 9c73c754f5 (このIDを非表示/違反報告)
nekosugi - 旧多君イケメンや!! (2018年4月23日 19時) (レス) id: f7266d588f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2018年4月21日 7時