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「じゃあ、今日はこのへんで。」


「はい。お疲れさまでした」


「…A」


「なに、まだ何かある?」







打ち合わせを終え、立ち上がろうと机に手をかけたところ、ちょうど声をかけられて静止する。



結局、倉元はあれから何も言わず、何もせず、そっと身体を離すとごめんねと呟いた。それも、悪びれもしない笑顔で、いつもの軽口を叩きながら。



本当に、それだけだった。



だから、今さら何かしようなんて思っていないのだろうけど。








「私、このあと部下と担当区域の巡回に行く約束をしているの。

というか、予定があるというのが正しいわ。」


「あぁ、まあ忙しいよね、それはわかってる。」


「わかっているのにわざわざ引き止めるほど強引で自己中心的な男だったかしら、伊東上等」


「あーも。Aって彼氏でもない興味の無い男にはそんなに無愛想で嫌味な女だったんだね。…初めて知ったなあ」








無愛想で、嫌味な女ですって?



この男、下手をしたら私が傷つきそうな言葉を軽々しく、そして悪気なく口にする。



私が傷ついたらどうしてくれるのよ。大変なことだわ。やめてちょうだい。



しかも、“自分の知らなかった元彼女の新しい一面が見れて嬉しい”とでも思っていそうだから余計にタチが悪い。



_______自分を裏切った元カノに、ありもしない悪口の罵詈雑言を並べて自我を保っているだけなら、器の小さいつまらない男だとまだ無視もできたというのに。








「私は私よ。いつでも変わらないし、変わろうとも思っていない。

あぁでも勘違いはしないでね。貴方のようにズカズカ無神経に人の心の中に指を突っ込んでほじくり回すような男が相手でなければ、私はこれで案外と愛想よく振るまったりもするものよ。」


「そ? 一応元カレって立ち位置だし、多少は踏み込んでもいいのかなぁって勘違いしちゃったかな?俺。

でも、Aがたくさん喋ってくれて嬉しいよ。

今までの猫かぶりより、今の方が好き。」


「…もうなんとでも言いなさい、さようなら」









バン、と小さく机を叩きながら席を立つ。


後ろ手で椅子をしまい、そのまま歩き出した。







「はい、さようなら。何かあったらなんなりとご連絡ください」







本当に厄介だ。



ああ言えばこう言う。どんなに悪意を込めて言葉を叩きつけようともびくともしない。



変わらぬ笑顔と本心からの好意で打ち返されては、この問答は私に勝ち目がないもの。

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ちぱるん(プロフ) - 旧多くん好きなのでこう言う作品が読めて嬉しいです!更新頑張ってください! (2018年5月21日 0時) (レス) id: beb8c0ac9c (このIDを非表示/違反報告)
氷麗(プロフ) - nekosugiさん» コメありがとうございます! わかりみです.。存在えろいですよね…← (2018年4月24日 0時) (レス) id: 9c73c754f5 (このIDを非表示/違反報告)
nekosugi - 旧多君イケメンや!! (2018年4月23日 19時) (レス) id: f7266d588f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2018年4月21日 7時

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