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バサッ
まとめられていた資料が床に散らばる。



拾おうにも、身動きが取れないのよ。








「伊東上等。」


「はい」


「…何をしているの?」


「んー、壁ドンならぬ机ドンってやつ?」







にやり。
ほんとは余裕なんかないくせに、口角を上げて私を組み敷く倉元。



こんな手荒な真似をしておいて、私の頭部に手を置いて加減をする優しい人。



男にしては柔らかい彼の匂いは、少し懐かしい。








「会うの、いつ以来だと思う?」


「さぁ、もう半年以上?」


「一年だよ。やっぱりまだ思い出しちゃうな。

…Aに振られた日のこと。」


「そう?私は思い出さないけど」







そんな昔話、今さらどうでもいいでしょう。
困った顔で無理に笑うなら、私の事など相手にしなければいいのに。



少なくとも私が知る伊東倉元という男は、自分に不利益が生じたとしても人間関係に亀裂が入るようなことは決してしない。



こんな大胆な行動を起こすなんて思ってなくて、完全に油断していたわ。








「…Aはそう言うかなって思ってた」


「思ったなら、何?」


「変わらないな、って。やっぱり。

…今の彼氏とは、上手くいってるの?」








貴方、こんな面倒な問答を好むような重たい男だった?



昇任式で見かけた時は元気そうだったし、とっくに吹っ切れたものと思ってた。








「ねぇ、倉元。

どうせ貴方のことだから、このままここでやっちゃえ。みたいな事もできないんでしょう?」


「は、?!…いや、何言って、」


「別にそのくらい相手してあげるけど。どうする?」


「…A、ふざけんなよ。俺はね、」








ギリ…と力を込める倉元。
掴まれた左手首の痛みに顔をしかめる。



嗚呼、この素直で誠実な男もいつかこんな私のせいで狂ってしまうのかしら。









「ずっと心配だったんだよ。

これでもAのこと、わかってるつもり」


「それはどうも。確かにわかってくれていたかもね。

でも今の貴方、ストーカーって言うんじゃない?」


「もー、なんでもいいよ。」








本当に哀しそう。寂しそう。
なのに無理して笑って、私の頭をくしゃくしゃに撫でる。







「Aが幸せなら、なんでもいいの。


だから無理しないで。絶対。もっと笑っててよ。」


「…、馬鹿なんじゃないの?」








私にはこの男の行動ひとつひとつが、欠片も理解できない。


人の感情は分析しきれないから、面倒だ。

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ちぱるん(プロフ) - 旧多くん好きなのでこう言う作品が読めて嬉しいです!更新頑張ってください! (2018年5月21日 0時) (レス) id: beb8c0ac9c (このIDを非表示/違反報告)
氷麗(プロフ) - nekosugiさん» コメありがとうございます! わかりみです.。存在えろいですよね…← (2018年4月24日 0時) (レス) id: 9c73c754f5 (このIDを非表示/違反報告)
nekosugi - 旧多君イケメンや!! (2018年4月23日 19時) (レス) id: f7266d588f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2018年4月21日 7時

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